北アルプス-槍ケ岳 ~ 脱初級雪山’96第1回山行 ~
山行日:1995年12月29日(土)~1996年1月2日(火)
参加者:L.坂本(記)、SL.玉谷、野崎
<28日> 上野23:58-富山6:03
<29日> 富山6:06-猪谷6:58/7:04-奥飛騨温泉口7:36(タクシー)新穂高温泉8:40/9:50-穂高平小屋11:10/40-白出小屋13:10/20-滝谷避難小屋16:20
新穂高温泉のバスターミナルで登山準備。登山指導所に計画書を提出し、チビ谷は蒲田富士を通過する登山者で雪崩が起きやすいから注意するように、とアドバイスをいただく。白出小屋の先の白出沢を越えると登山道となる。トレースが薄いため、一歩一歩踏みしめながら歩く。思いがけずアップダウンに苦しみ、小枝にひっかかり、この日は滝谷までが精一杯。避難小屋の側を整地してテントを張る。(積雪は林道付近で50cm、滝谷付近は1m強、天候は時々小雪)
<30日> 滝谷7:10-槍平9:00/15-奥丸山15:00-幕営地点15:15
5時過ぎに起床。いくつかの谷を横切って冬期小屋のあいている槍平につく。ここから先はトレースが全くない。横浜蝸牛の会の5人パーティが飛騨沢ルートを探っているが、私たちは予定していた中崎尾根ルートへ進む。すぐ後から彼らもやってきて、リーダーの素早い偵察とOKサインで尾根にとりつく。我々はワカンを靴にとりつける。すぐに彼らに追いつきラッセルを交替したが、いきなりの急斜面でなかなか上に移動しない。
彼らと再び交替したところで、玉谷君テントのポールがないぞ!!事件が発生し、彼はポールを探しつつ槍平小屋まで下ることになる。蝸牛の会と我々は暗黙のうちにラッセル同盟を組むことになったが、彼らのラッセル技術と体力は見事なもので、トラバースルートや直上ルートが次々に刻まれていった。最後の斜面を登り切ると奥丸山。ここから少し下った尾根上にポール付きでテントを張る。(積雪は1.5m、この日も小雪)
<31日> 幕営地点7:10-2500m地点11:00-千丈乗越13:00/15-肩の小屋16:00
本日も5時過ぎに起床。快晴。朝から股までのラッセルである。少し先で幕営していた我らの同盟はまだ準備中である。やがて彼らと合流する。トップが空身で進み、2番手以降が踏みしめる。2番手がやたらに辛い。トップで進むと何てラクチンなこと。ラッセルなんて軽い軽い!! しかし、再び自分のザックを背負うと何て重いこと!! 2500m地点にたどりつくと、我々の輝けるラッセルルートを別パーティが快適に歩いてくる。ここから先は千丈乗越までの約200mの急登と、肩の小屋までの約350mの急登のダブル急登が待っている。ワカンをはずし、クラストした斜面をアイゼンで登る。
稜線にでると、北側から強風が吹き上げてくる。耐風姿勢をとりながら進むが、だんだん疲れてくる。玉谷君は逆上したように高度をかせいでいく(我々はこのルートを玉谷逆上ルートと名付けた)。登頂可能な天候状態なのに、登頂不可能な疲労状態の私は肩の小屋についたのに、リーダー権限を乱用して槍ヶ岳の登頂を明日にのばしてしまう。この日は冬期小屋泊まり。(積雪は稜線上はそれほどでもなく、冬期小屋周辺で50cmほど、槍の穂先はほとんどなし、快晴で午後より強風)
<1日> 肩の小屋15:20-槍ヶ岳山項15:50/55-肩の小屋16:25
この日も同様に起床。新年明けておめでたいのに外は強風。今日は停滞日となるか。小屋の中ですきま風が寒いので、窓にビニール袋、入り口にツェルトやシートを張り付ける。昨日登頂していないため、少しでもチャンスができればと、1時間おきに外の様子を見に行く。晴れているけど風が強い。外は明るいのに中は真っ暗。ガスと蝋燭をほそぼそとつけて、居眠りしたりふるえたりする。本日最後のチャンスと思いながら3時に再び外の様子を見に行く。風が穏やかになっている。急いで身支度を整えて、明るい小屋の外に飛び出す。穂先に取り付いている入はいない。玉ちゃんトップで出発。雪の薄くついたルートは梯子も鎖もしっかりでている。手足を滑らせないように慎重に登る。最後の梯子を登り切ると槍ヶ岳山頂。360度の大大展望をぐる~っと眺めて下る。
<2日> 肩の小屋7:30-千丈乗越8:20/25-槍平10:00/25-滝谷11:00/05-白出小屋12:20/13:00-穂高平小屋13:35/14:15-新穂高温泉15:00/16:00-(タクシー)猪谷17:15/27-富山18:12/21:29-上野5:30
またもや5時過ぎに起床。快晴、無風。今日は下山日。頂上直下のトラバースを緊張しながら下り、2500m地点からは飛騨沢経由で槍平に向かう。しっかりとしたトレースがついていて、足取りは快調である。そのほかにも中崎尾根経由が数本、大喰岳経由が1本、とあちこちにルートができている。白出小屋の先でこの日入山した山中夫妻と森君に出会い、我々の登頂やルート状況を報告する。この日下った道のりに登りは3日間もかかったのだ。下りのなんと早いことか。新穂高温泉で身ぎれいになり、早月尾根を愛する会というコピーの飲み屋で登頂と無事の帰途を祝って乾杯した。
今回の山行は、計画段階でどのルートから入るか迷ったが、雪崩の危険性の少ない中崎尾根をラッセル覚悟で選んだ。また、1日の行程時間を考えた結果、肩の小屋に泊まる可能性が高いため全行程を荷物を背負って登ることにした。結果的にラッセル同盟を組んだ蝸牛の会に助けられた部分と天候に恵まれたこと、1日1日を予定通りに確実に行動したこと、総合的に無駄な部分なく山行できたことが登頂成功の要因だと思う。
今回の装備を参考のために紹介します。
<共同装備>
テント(2~3人用、内張り、ポール)、竹ペグ6本、スコップ1本、銀マット2枚、コッヘル1セット、お玉としゃもじ、コンロ2台、ボンベ12個、ロウソク10本、ブス板2枚、ビニール袋大1枚、ダスポン数枚、新聞紙1部、トイレットペーパー2個、テルモス大1個、たわし1個、ラジオ1台、天気図数枚、無線機1台、写るんです1個、ザイル8mm×20m2本、ツェルト1張、常備薬1式、ポリタン5リットル1個、日焼け止め、しの竹15本、赤布数枚、予備電池10本、
<共同食糧>
朝食4食、予備朝食1食、夕食4食、予備夕食1食、お茶・ココア・紅茶・砂糖お酒1.5升・ウイスキー1.5リットル
(朝食の基本系はアルファ米と味噌汁としたが、元日はお節料理付き、夕食は29日が海鮮なべ、30日が焼き豚とドライフーズのチリビーンズ餅、31日がソーセージなべ、1日がカレーライスであった)
<個入装備>
ザック、登山靴、ピッケル、アイゼン、わかん、ストック2本、オーバーヤッケ・ズボン、手袋・オーバー手袋・替手袋、靴下・替靴下、ロングスパッツ、帽子、目出帽、サングラス、長袖シャツ・長ズボン、セーター、アンダーウェア上下、替下着、シュラフ・シュラフカバー・エアマット・食器・はし、ビニール袋、ヘッドランプ・予備電球・電池、ナイフ、ライター、手拭い、予備靴紐、地図、磁石、筆記用具、計画書、保険証、持病薬、洗面道具、ハーネス、エイト環、カラビナ(安全環付き1枚、普通2枚)、シュリンゲ3本(長テープ含む)
<個人食糧>
朝食1食、昼食6食、行動食
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