穂高屏風岩東稜ルート<4級下、Ⅳ・A1、155m>
1999年7月24日(土)~26日(月) 前夜発2泊3日
L:坂本(記)、玉谷
23日:新宿駅21:00(中央本線特急)松本駅23:55<駅前で仮眠>
山行部になってから自分の岩登りは雨でことごとくお流れ。皆さんから届く計画を見ながら、何で私は下界にいるんだろうと悶々としてた。でも梅雨明け。これからは登るぜぇって夏の第一弾は穂高の屏風岩。横尾から涸沢に向かう途中の対岸に見える、カッコイイ岩壁です。今回は屏風岩も初めてながら、人工登攀の本チャンも初めてという、初めてづくしで、登る前から非常にドキドキワクワクしていた。
24日:松本駅3:30(タクシー)上高地5:10/30横尾7:30/40岩小屋8:00 1ルンゼ8:30 T4尾根取付10:00/30 T4 12:30
24日の早朝、予約していたタクシーに乗る。途中コンビニで買い物したのに、ゲートが開く30分前に着いてしまった。1年ぶりの上高地で、横尾まで非常に快適にとばす。横尾の橋は工事中なので、下流側に仮設されている横断道を渡り、ここから30分ほどの岩小屋で一般道と別れる。対岸に渡る渡渉地点を探すのだが、護岸工事の影響のせいか、以前の情報と違う。20mほどの間を行き来して、一番水深の浅そうなところを斜めに渡る。後半は膝くらいで靴を脱いだ。この渡渉はナイスルートファインディングであった。
対岸の1ルンゼ出合にはケルンが積んである。ルンゼはそんなに急登ではないのだが、大きな岩がゴロゴロという感じで乗越しがいやだ。T4尾根取付までは、横尾山荘の情報通りに雪渓はなかった。T4尾根の登りはアプローチとしては難しく先行パーティも苦労しながら取付いている。私は最近の睡眠不足などに暑さが加わって気持ち悪くなり、先行パーティがいるのを良いことに暫く横になる。
T4尾根の1ピッチ目はスラブを左に回りこみ残置ロープの下がった支点まで玉ちゃん(20m、Ⅳ)。続いて右上バンドを次の支点まで私(15m、Ⅲ)。3ピッチ目は核心。被った凹角の乗越し後に支点がなくエイリアンとアブミで玉ちゃんが抜ける(15m、Ⅳ・Al)。凹角に唯一あったハーケンは後続パーティにより抜け落ちたそうだ(もちろん彼も)。あとはフェースを樹林帯まで坂本(20m、Ⅳ)。ガイドでは2ピッチだが4ピッチで抜けた。ただ、ルートはもう一方の右側の方が優しいそうだ。
岩を抜けた後も念のためにツルベで進む。T4直下もⅢ級ながらいやな岩場になる。 T 4は4畳半ほどのスペースがある。ここから登るのが雲稜ルートや蒼稜ルートだ。壁のハーケンからシュリンゲを伸ばしてツェルトを張り、もう1枚のツェルトを下に敷いて出来上がり。今回はコンロなし。行動食をとって夕食。
この後、先輩がピュアな初心者2名を連れて雲稜ルートへ(途中ビバーク)、単独が1ピッチザイルを伸ばしたものの撤退、翌朝雲稜ルートを登る関西の2名がT4でのビバーク組。夜、雨が降ってくる。石も時々降っていた。明日登れるかなぁ、絶対に降りたくないなあ、と思う。
25日:T4 5:00 T 2 5:30終了13:00 屏風の頭15:00 北尾根コル16:00 徳沢18:30
26日:徳沢7:00 上高地9:20/10:00(バス)新島々11:10/25(松本電鉄)松本駅
朝、まだポツポツしている。経験者パーティに聞くとボルトラダーだから登れますよ、と言われ、少し安心して出発する。東稜ルートの取付であるT2へは、 T4直下の立ち木でビレイして踏み跡をトラバースする。草が覆っているが一歩踏み出せばあとはわかる。いったんT3に下降し、T2まで登り返す。 T 2もビバーク可能な2畳くらいの広さだ。見上げると、フリクションの効きそうな岩で垂壁のせいか雨の影響もない。
1ピッチ目は小ハングを乗越したバンドまでを玉ちゃん(Ⅲ+・A1、15m)。途中支点の間が遠く、人工登攀にも慣れていないせいか、結構時間がかかる。そういってセカンドの私も時間をかける。2ピッチ目はフェースを直上し、中間のビレイ支点から凹角を左ヘトラバースしてバンドまでを坂本(A1、40m)。たまにペツルのボルトがあるので嬉しくなる。
3ピッチ目は頭上に見える支点まで玉ちゃん(Ⅳ、20m)。ここで水分を補給する。4ピッチ目は核心で坂本。右上しながら小ハングを乗越し、右手のクラック沿いから、すぐに左の壁に戻り、フェースを直上すると左側にテラスがボコッとある。小ハングの乗越しでは次のボルトに届かなくてナッツを1個使った。このテラスは3ピッチ目の終了点のちょうど真上になる。でも喉は最高にカラカラなので、玉ちゃんが登ったところでまた水を補給する。
5ピッチ目はテラスから壁を右にまわりこんで左上を玉ちゃん(Ⅲ、20m)。そして、いよいよ最終ピッチ。右のピナクルの上から直上すると最終テラスに到着(Ⅲ・A1、30m)。終了点近くは今まで登った壁が見えないくらい垂直で一番高度感があった。時間は13:00。
ルートはガイド通り、リングの抜けた穴に細引を通してあるボルトにもアブミをかける。ただ、ヌンチャクは続く支点の状態を見ながら掛けていったほうがいい。高度感はあるが、谷川岳や前穂東面のような変な恐さはなかった。終了点からあと1ピッチ分ザイルを伸ばした所で靴を履き替え、余分な登攀道具をしまう(メットは枝除けに被っていた方が良い)。
最終あずさは無理だけど、急行アルプスには乗れるだろうと屏風の頭を目指すが、水分不足、さらに行動食も食べていないので(これはいつもの事だが)、10分歩くとケホッと乾息がでる。汗も出ないくらいなので、体温があがらないように歩く。踏み跡はわかりやすいが、手を使います。ビバーク地もたくさんあります。やっと屏風の頭、そして耳で一般登山道に合流。北尾根のコル経由で徳沢へ下降する。なのに腰が痛くて15分位で休んでしまう。何回か休んだあと沢々と水音。水だぁ~。カラカラのペットボトルを持って水を飲みに行く。ここで500mlずつ補給。不思議なことに腰も痛くなくなり、足取りもルンルンになった。ここから先は水の近い世界であった。
徳沢についたのが18:30。急行アルプスは松本0:30発、上高地まで頑張って1:30、その先のゲートまで歩いて間に合うかなあと思ったが、たぶん車道を3時間近く歩くことになりそうだということで、徳沢に泊まることにした。人工登攀以外のルートはガイドの時間通りに登れていたのだが、2倍も時間がかかってしまったのが致命的であった。しかし、他のパーティを見ても、屏風はアプローチが近いせいか1泊2日の範疇になっているようだ。去年は地震で登れなかったし、お盆は甲斐駒に行くので、何とか1泊2日で登れる計画を作ろうと頑張ったんだけど、結果2泊3日になってしまった。
しかし、アプローチもわかったし、登攀途中や終了後のビバーク地もわかったし、来年のためには大きな収穫。来年は2泊3日があるし。雲稜ルート登って、懸垂で降りてきて、もう1本他のルートを登るということも可能だろう。何かコツがわかれば凄くうまくなれるような気がするのは自信過剰かなぁ。