錫杖岳-前衛フェース・左カンテルート
8月26日(土)~27日(月) 前夜発1泊2日 坂本多鶴(記)、玉谷和博
26日 新宿駅23:00(高速バス6500円)新穂高温泉6:20/7:00(バス220円)中尾温泉口 7:03 前衛フェース取付10:30 終了点14:15 錫杖沢出合17:40 中尾温泉口18:30 幕営地21:00
27日 幕営地5:40 中尾温泉口6:30(タクシー2000円)平湯温泉7:00/55(バス2300円)松本駅9:20/11:10(スーパーあずさで帰松)
前週は北岳バットレスの中央稜を狙ったが、睡眠不足のせいか私が不調になり、アブローチのビラミッドフェース4P目終了点で撤退。そして、今週は新穂高温泉に近い錫杖岳の前衛フェースがターゲット。笠ヶ岳が僧の笠だとすると、その錫杖のあたりに位置するためにこの名があるそうだが、結構立った花崗岩の岩峰群から形成された山容は、遠くから眺めても近くから見てもいい感じで、まだまだ未開拓の部分もたくさんありそう。黒部もそうだけど、事実新しいルートが開拓されています。
暑苦しい新宿のバス乗場から、少々肌寒い新穂高温泉へ。ここから路線バスに乗り、中尾温泉口で下車。工事中の槍見温泉から登山道に入る。昨年も来たのだが、土日とも雨で、おまけにネズミにテントを齧られ、さらに膝から下をブツブツに刺されての撤退。
沢を渡ってさらに登り、対岸に錫杖谷が見えてきたら踏み跡から沢に降り、錫杖谷の左岸の踏み跡をヤブをこぎつつ登りつめ、最後に右に回りこむと左方カンテルート取り付きの広場に出る。岩場には誰もいない。黒部もそうだけど我々ってちょっとはずしている。
登攀準備して玉谷よりリード開始。1P目(Ⅲ、40m)はルンゼ沿い。岩屑が溜まっているので、ビレイヤーは落石注意。2P目は坂(Ⅳ-、30m)。さらにルンゼを登りカンテを左に回り込んだテラスまで。途中の岩の乗越しがフリーCみたいなムーブになっていやらしかったが、玉ちゃん曰く左からがラク。3P目は玉(V+、40m)。ピナクルからカンテを右に回りこみV級のフェースを越え、トラバースしてチムニーの下まで。Vの部分は日本の岩場ではA1で、我々はもちろんアブミを使いましたが、空身だったらVで登れそう。4P目は坂(Ⅳ、25m)。チムニーにザックがひっかかるので、外に出ようとするとザックの重さで岩からはがされそうになる。越えてさらに登り大木でビレイ。5P目は玉(V、40m)。クラックの左のフェースを登り上部から右に抜けて木でビレイ。壁が立っているのでザック持ちには少々甘く感じるホールド、またまた岩からはがされそうな感じになる。6P目は坂(Ⅲ、15m)。大テラスまでの何てことはないピッチ。7ピッチ目は玉(V+、40m).ルートの核心部。あと2ピッチなので、ザックを置いておくことにする。私の感想は三つ峠の観音右だが、玉ちゃんの感想は変形チムニー。左側に生えている木も利用してチムニーに入り、左側の壁のクラックを使いつつ上部に抜けて左上し、テラスでビレイ。荷物置いてきてよかったね、のピッチであった。8ピッチ目は坂(Ⅳ、40m)。ここは三つ峠の一般ルートを思わせるピッチ。脆いと書いてあったが、おせんべいを立てたようなホールドははがれそうではがれない。登りきって木でビレイ、ここで終了。
錫杖岳の岩々が景観を囲んでいて素晴らしい。ここから懸垂でほぼ登ったとおりに下降する。シングルロープで下降できる程に懸垂支点はたくさんある。大テラスでザックを回収して取り付きに戻り、再びヤブの踏み跡をたどると、錫杖谷の出合にはガイドの篠原達郎さんがいつものお客さんと来ていました。
錫杖はビバーク装備を持って登る本チャンルートというよりは、空身で登って降りてくるゲレンデ的な感じがした。三つ峠でⅣ+~Vを登った人には良いのではないでしょうか。懸垂下降も安全な方だと思います(ローブダウンの際に少々ひっかかりやすいかもしれないが)。新しい岩場に行く時はいつも恐怖感があるけれど、錫杖は楽しいばかり(人間と岩とどちらが恐いかというと人間でしょう)。9月からは毎月3連休。再度丸東の緑ルートに挑戦する予定だけど、唐沢幕岩もカッコ良さそうだなあ。色々な岩場に行くことは、アプローチや岩場を終了してから抜ける、或いは下降するにしてもルートファインディングの力がつくし、開拓した人も違うし岩質も違うから、もちろん登るのも勉強になる。撤退したとしてもとても学ぶことが多い。加えてそれがクラシックルートだとさらに浪漫がある。もっと夢や浪漫を追い求めよう。違う世界を作りあげていこう、新しい年に向かって。きっと私たちなら出来るよ。