一ノ倉沢烏帽子沢奥壁 南稜フランケダイレクトルート
2002年6月8日(土)~9日(日) L坂本多鶴(記)、SL王谷和博
先々週に凹状岩壁を登った時、南稜フランケには多くのパーティが取付いていた。フランケという言葉に何となく怯えている私たちであるが、その中でも簡単な南稜フランケダイレクトルートから登ることにした。烏帽子沢奥壁では、1950年代の後半から次々にルートが拓かれ、64年には南稜フランケ、66年にダイレクトルート、69年に南稜フランケダイレクトルート、そして、72年にはディレッシマが登られる。我々はどこまで登れるだろうか。
7日(金) 上野駅22:30(上越新幹線)上毛高原駅23:39(タクシー約9000円)一ノ倉沢出合24:10
2週間ぶりの一ノ倉沢はゲートも開き、出合までタクシーで入る。去年の同じ時期よりも暖かい感じ。ただちにテントを張って就寝。
8日(土) 出合8:00 取付き9:30 終了点(4P目)12:00(南稜経由)取付き13:00 出合14:00
お互いに仕事疲れかしら、起きよう起きようと思いつつ、睡魔にぐぐ~ぅと吸い込まれる。というわけでテントを8時に出発。雪渓はまだまだ充分あってテールリッジまでは快適。今回は南稜フランケ辺りに取付いているパーティはいないようだ。私たち南稜フランケダイレクト組とエキスパートルート組が準備しているだけだ。 ルート図では鎌形ハングのちょうど真下にビレイ点があるようだが見当たらず、南稜フランケのビレイ点を使用する。さらに、鎌形ハングの下に崩れたてのような白い岩がゴロゴロしていて、見上げると、白っぽく岩が剥がれたような跡が…。
「とにかく登攀開始!」
1ピッチ目は坂本、右上気味の凹角を登り、小ハングを越えるためにアブミで伸び上がってみるが、支点がない.本当に崩れたようだ。ハーケンを打ち足そうにも、さらに崩れそう。降りようかなぁ…と思ったが、右にトラバースできそうだ。
ハング下の抜けそうな岩をホールドにしつつジワジワとトラバースすると、右上にハーケンが打ってあった(これが迂回ルートなのかな?)。そこを乗越すとやさしい階段状なのに、ハングを直上する予定が、トラバースでジグザグになってしまったので、ザイルが非常に重い。踏んばりながら登り、やっとこさ立ち木でビレイする(30m、IV・A1)。
2ピッチ目は玉ちゃん。立ち木に乗ってハングを越え、フェースを登るピッチだが、登れなさそうという事で、ハング左のクラックからハーケン1本を打ち足して登り、ハング上に出て外傾フェースを右上する(40m、IV+)。
この立ち木は1980年に発刊された「谷川岳の岩場」にも同じような姿で載っているが、20数年もの間、何人のクライマーに肩を貸したのだろうか。我々の隣でエキスパートルートを登っているパーティは、かなりランナウトするらしく、「難くないけど、恐い!」と言いながら登っている。
3ピッチ目は坂本。玉ちゃんに核心部を登らす予定が、2ピッチ目で3ピッチ目の途中まで登ってしまったため、思惑がはずれてしまった(40m、V+)。フェースを左上して凹角を登り、ハング下を左にトラバースして乗越す。
凹角を登っているときにふと、幕岩や人工壁で柏瀬さんが挑戦している姿が頭をよぎり、何だかやるぞおぉという気持ちになった。越えるときにホールドが抜けそうになって一瞬ヒヤリとしたが、なかなかいい感じで登れた。
乗越したところが、ルート図4ピッチ目の終了点。5ピッチ目より上は今ではほとんど登られていないと書いてはある。いつもの私たちなら登っているのだろうが、今回は初の南稜フランケでザックを取付きに置いてきたため、喉もカラカラ、そのままヤブを漕いで南稜に合流する。
ザイルいっぱいで何とかビレイ点を作っていると、南稜を下降してきた人が「南稜フランケダイレクトは鎌形ハングが崩れて、先週登ったパーティが撤退してましたよ~」と教えてくれた。
南稜経由で取付きに戻り、ザックを回収して出合まで下ると、先ほどの人が仲間たちと休んでいた。メットを取った顔を見ながら、「どこかでお会いしませんでしたっけ?」と声をかけると、今年の1月の小同心クラックで、私たちの前を登っていた龍鳳登高会の大森さんであった。
その時はキジ坊がオールリードで、松ちゃん、玉ちゃん、私の3人がぶらさがっていたのだが、「こいつらの会ひどいんだぞぉ。一番年上にオールリードさせるんだから」とお仲間に喋っている(す、すみません…)。
神田山の会の大江さんと、品川さんかくてんの宮ちゃんにも久し振りに会った。
9日(日) 出合7:45 ロープウェイ駅8:45/55(バス)水上駅(電車)松戸駅
昨夜は雨が降ったので、隣の龍鳳登高会は朝いちで退却。我々も帰ることにする。今回は3ピッチ、100mちょっとと短かったが、短いなかに色々あって面白かった。お互いに登っている姿が見えにくく、滝沢を流れる沢の音がうるさくてお互いの声も聴こえにくくパーティシップを確認するのにも良かったな。ところで、今年は一ノ倉を色々登りたいねぇ、という気持ちになっている。5月の凹状岩壁、6月の南稜フランケダイレクトといい感じ。でも、あっという間に日が過ぎていっちゃうんだよね。暑い夏もダラダラと汗をかきながら登ろうかなぁ。
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