八ヶ岳西壁で冬期クライミング③
横岳西壁・石尊稜(冬期グレード1級)までのラッセル
山行目:1997年2月22日(土)~2月23日(日) 1泊2日
参加者:L玉谷和博 坂本多鶴(記)
タイム:赤岳鉱泉5:30石尊稜下部岩壁取付き9:30/10:00赤岳鉱泉12:45 美濃戸14:00/14:30太陽館15:30~6:40 (1日目は入山のみ)
冬期クライミング②で赤岳主稜を登った時の恐怖感から抜けきれず(県連救助隊の阿部隊長からは、恐いところにいってるんだから当たり前だっ!!)、さらに私は4週間前の八ヶ岳で右足の指、玉ちゃんは3週間前の八ヶ岳で両足の指が凍傷になりシビレがとれない状態。でも、足のシビレよりもアルパインクライミングに心がシビレている「アルパイン凍傷群」の我々は、次なる目標の石尊稜を目指すことにした。
土曜日の八ヶ岳は晴れ。金曜日は地吹雪だったそうだ。赤岳鉱泉に向かう途中、森クンの友達のキクゾウに出会い、森&ワタナベ組がすでに入山している情報をもらう。鉱泉は前回よりも空いていて、ガイドの遠藤晴行さん、桑原清さんらが泊っていた。
翌朝は4時に起床。朝食をとり、準備を整えて出発する。中山乗越への標識がある所から沢に向かうトレースに入る。少し歩くと玉ちゃんが道が違うようだと言うので元の分岐まで戻り、分岐から左に向かうトレースに入ると目標としていた沢筋に入った。トレース上を黙々と歩くと今度は無名峰ルンゼに入りこんでしまったため、また少し戻り、三叉峰ルンゼに入るもトレースがなくなって、ラッセルが始まる。
昨夜、ラッセル山行に行きたいよ~って言ったけど、今日やりたいなんて言わなかったのに。膝上までもぐるとさすがに歩きにくく、時には自分の脚を雪の中から持ち上げながら進む。ひえ~何とかしてくれ~!!状態で進んでいると、小さな尾根の末端に赤テープがぶらさがっている。ここが石尊稜の末端のようだ。
2人だけのラッセルも大変だし、ルンゼより尾根の方が雪が少ないかなぁって尾根の末端にとりつこうとするのに、胸までの雪であがることができない。あきらめて、もう少し先からとりつくことにする。ここも胸までだ。玉ちゃんが雪の中から枝を掘り出しながらジワジワと登っていく。やっと尾根上にでたが、まだモグルモグル。斜面が急になってくると頭までの雪って感じだ。両手を猫のようにつかって雪を掻き下ろし、膝でクソックソッって何度も踏みつけるているのに、なかなか足場ができない。ニャンてことだ。こうなったら最後の手段でチキショ~って感じで登るしかない。
ラッセルから解放される場所にやっとたどりつく。ここからは岩をまきながら左上ぎみに登るのだが、岩の近くは雪が少なくて、その下はボロボロっぽいので足を出すのに躊躇する。とにかく登るぜ~ってな感じで太いダケカンバの所まで登る。後ろから登ってきた玉ちゃんのワンタッチアイゼンが片方はずれてしまったので、シュリンゲをロープがわりに垂らして確保。岩を登っている途中ではずれたらイヤだなぁ、今日はやだなぁ、と思ってしまう。
ここで1本ザイルを出して、ツルベで登ることにする。後ろから3人パーティがやってきた。そしてスグに下部岩壁の取付に出た。石尊稜は下部岩壁と上部岩壁の間を雪稜がつなげていて、上部岩壁を登ると稜線に出るのです。そのスタート地点までで4時間もかかってしまった。
ここから先はルート図では2~3時間なのだけど、倍の6時間を想定していたので、天気は絶好のクライミング日和だけど、今回は取付き地点の確認で下山することにする。中高年の3人パーティには私達でラッセルするんだったら来られませんでしたよ、と言われた。さらに後から来たパーティは、小屋から30分から1時間で着いたそうだ。トレース目当てで小屋を遅くでてくるらしい。そんなこと考えつかない初心者の私達って可愛いやつら。
自分たちのつけたトレースが非常に気持ち良くず~っと見えている。下りで気づいたのだが、小屋から沢へ人る箇所から石尊稜の尾根の取付きまで赤布がずっとうってあった。
天気がいいので、寝転んで西壁を眺める。青い空の下にダバーッと広がる壁には何人かが取付いているはずなのに全く見えない、ちっちゃなちっちゃな人間たち。でも、大きな大きな感動を求めたい。鉱泉に戻る途中、身体の大きな森クンと声の大きなナベちゃんに出会う。振り向くと頭の大きな玉ちゃんが笑っている。私も扁桃腺が大きい。みんなそれぞれ大きなものをもっているのだ。これからも大きなものを求めて成長していこうよ。