北岳バットレス ピラミッドフェース~第四尾根主稜
1997年9月20日(土)~21日(日) L坂本(記)、 P玉谷
19日(金) 新宿23:50(アルプス)甲府2:08
20日(土) 甲府2:15(タクシー)広河原3:15/45 二股6:00/10 取付8:20/50 終了点 16:30/17:00 肩の小屋17:40
21日(日) 小屋6:35 広河原9:20
ピラミッドフェースと言っても、そこはエジプトではなく日本の北岳バットレスです。昨年10月に登ったときは5ピッチ目で敗退(ヌンチャク残置)、今年の8月に登ったときは8ピッチ目で敗退(ナッツ2個残置)、そして今回は3度目の掃除機なのです。
広河原に到着すると人気がない。しかし見上げると満天の星たちよ。月星明りのもとクモの巣を吸い込みながら掃除機はどんどん歩く。取付地点が近づいてきたので、フェース全体が見える場所で進むべきルートを確認することにした。ふむふむ、あそこがあそこかぁってな感じ。そして取付地点へ。天気は抜群、あとは私たちが抜群になれるかどうかだ。汚名挽回じゃなくて名誉挽回よ、玉ちゃん。で登攀開始。
1P目、凹角から草付フェース直上を坂本リード。1本目は身体が慣れていないからやなんだよな、ぶつぶつと登る。
2P目、玉ちゃんが草付きを左上しながらバンドをトラバース。
3P目はルート図では右上しているが、フェースを直上してバンドから左上に登るルートがあったので、そちらを坂本が登る。
4P目はフェース右上を玉ちゃん。ここで横断バンドに出る。このバンドが足元が崩れててモロモロ。初めてきたときはこのヤラシイバンドを2回も通過してしまったのだ。その時に玉ちゃんがかけたヌンチャクに手が届かなくて残置してしまったんだよな。
5P目はそこを坂本トラバース。
6P目、今のバンドの上を走るバンドを玉。 ここも少々モロイ。
7P目、フェース直上を坂本、到着地点は前回の撤退地点である8P目、こないだと同じく玉ちゃんがリード、順番だもんね。
前回玉ちゃんはリードしていて3mほど落ちてしまったのだが、ここが第一の核心部で中間支点が少ないのである。しかし、今回は核心部対策としてナッツの数を増やしてきた。お願いだから登ってくれぇ (私は登りたくないよぉ)と祈る。玉ちゃんは対策通りにクラックにナッツをセットしてジワジワと登っていくが、登っていく先もピンが少ないようだ。
ザイルを通して動きが伝わってくる 「ビレイ解除~っ!」デカイ声が懐かしく響き渡る。さすがぁ玉谷くん。
9P目、クラックからフェースを坂本がリードしたのだが、2人の記憶からはなぜか消え去っているピッチ。
10P目、逆層のフェース(でも、ここ以外も結構逆層なんですよ)を玉ちゃん。
11P目、第2の核心部である 8P目で男の意地を見せられたため、今度は女の意地をふりしぼらなくてはならない。逆層のフェースの残りを登り一旦テラスへ。そこからフェースを左上、次のクラックが核心だ。上部に行くほど支点がなくなってくるのでナッツをセットする。さらに上部はナッツもセットできないのでそぉっと登って、左側へじわぁっと移動してテラスに到着。ふう、女の意地たくさんしぼった。
12P目、凹角状を右の壁から中央にむけて玉ちゃん、ここでピラミッドフェース終了。
13P目、右にトラバースして4尾根主稜に合流し、白い岩のクラック基部まで登る。
14P目、玉ちゃんが白い岩のクラックを登る。
15P目、簡単なリッジを坂本。
16P目、3mの垂壁を越えて懸垂支点まで玉ちゃん。10mの懸垂下降。
17P目、フェースを玉ちゃん。
18P目、凹角を枯れ木テラスまで坂本。
19P目、ハイマツの終了点まで玉ちゃん、4尾根に入ってからは早かった。
身体が冷えてウンチ君状態になっているため、二人とも足早に小屋へ向かう。3000mの山はさすがに寒いのだ。俺の方が絶対に早い、とトイレに駆け込む玉谷。なのに出てこない、早くでてこい!! 紙を返せ!! ザイルをはずすと争いがはじまる。なんで?
取付から終了点まで19ピッチ、約6時間半。さらに初めての継続登攀、今年の夏は穂高の滝谷ドーム中央稜(3級)の快適な登攀から始まって、谷川の衝立岩中央稜(3級:撤退)での悪場と雷、剱岳のチンネ左稜線(4級下15ピッチ)の長いアプローチとピッチ数、そして今回のピラミッドフェース(4級下)など登った。そして、去年とくらべるとアプローチを含めて格段に動きが速くなった。体力がついたこと(これは必須)、ザイルさばきや支点作りなど含めて装備を使いこなせるようになってきたこと、登るための知恵がついてきたこと。そして、次はここに登ろうぜぇって力を伸ばしあっていけるパートナーがいること。でも、岩の本チャンも今年は終わり、来年はもっともっと登りたい。雪山までは三つ峠で登りまくってトレーニングしよっ。