北アルプス 白馬主稜(冬期クライミンググレード中級)
山行日:1998年4月11日(土)~12日(日) 前夜発1泊2日
メンツ:L坂本多鶴(記)、玉谷和博
アルパインのクラシックルート。白馬主稜もそのひとつです。稜線は八つの峰からなり、急峻で蛇のようにうねり、誰もが美しいという。今まで主稜線を登らずに大雪渓から登っていたのは邪道だったのか、そして今回は蛇道を攀じろうとしている。
10日 新宿駅23:50(急行アルプス)信濃大町駅5:05
11日 信濃大町駅5:10(大糸線快速)白馬駅5:36/45(タクシー約1700円)二股ゲート6:00 猿倉8:00 白馬尻9:30 3・4峰間16:30(幕営)
急行アルプスは先週に引き続き空いている。白馬駅のコインロッカーに下山後の着替えと運動靴を置き、タクシーで二股ゲートまで入る(タクシーは予約不要。駅前には24時間営業のローソンもある)。猿倉までは4月末以降でないと車では入れない。ただ、ほぼ除雪はしてあったので快調に飛ばす。猿倉の少し手前から雪道になる。杓子岳双子尾根に向かう3人パーティと別れ、主稜を目指す他の2パーティと抜きつ抜かれつ進む。非常に良い天気だ。白馬尻からはすぐ主稜末端の八峰に向う。デブリのある右側の灌木にそって登り、上部に出てからさらにデブリをさけて右側からまわりこみ八峰のピークを目指す。暖かさで雪面には割れ目も出来ているし、雪はグサグサのざらめ雪である。
3パーティのうち、ベテラン2名を含む3人パーティが先行していき、その後を女性2名パーティ、我々が続いた。斜面を登ったところで、ハーネス、ヘルメット、アイゼンなどを付ける。ここからはとにかく稜線上を進むのである。状態が悪いのにさすがにベテランのいる先行パーティはルート取りが上手い。シュルンドや吹きだまりを上手にさけていく。しかし、岩部分は岩が脆いし、ハイマツなどの部分は内部の雪が融けているし、とにかくバランスクライミングである。全部の体重をあずけないよう、かつ体勢を崩さないように片足ずつあげていく。2本のバイルもグサッとさしこんで押さえつけながらホールドにする。この日はほとんどコンテで行動した。
ガイドによると6峰と3峰が急で2峰が岩峰とあるが、顕著なピークとそうでないピークが入り混じっていて、どれが○峰なのかよくわからなくなる。地図上のピーク2つは8峰と5峰だろうと思うんだけど。5峰の手前で女性パーティが雪洞掘りを始める。さらにナイフエッジを越えて登った白馬沢側に先行パーティが幕営していた。私たちはもうひと登りしたところを幕営地に決める。4~5人用も張れそうな場所だ(ここが4峰か?)。少し掘り下げながらテントを設営し、4隅をバイルで固定する。夜はほとんど風がなく、ザラメ雪なので水もすぐ出来て快適であったが、濡れたインナーブーツは乾かずじまいであった。
12日 幕営地6:30 白馬山頂10:30 白馬尻12:30 猿倉13:15 二股ゲート14:30(タクシー1900円)白馬駅14:45/16:22(大糸線)信濃大町駅17:/10 松本駅18:01/36(特急あずさ)新宿駅21:06
翌朝は1番に出発するが、夜も冷え込まなかったせいか雪がしまっていなくて斜面でラッセルになる。3峰を登る途中で昨日の先行パーティに抜かれる。ここで、先行パーティはツルベにしていた。白馬沢側の雪庇をよけて斜面を左ぎみに直登するためにそうしたのだ。ここは私たちもコンテでなくツルベにするべきだったろう。私たちは玉ちゃんが進む間、私が仮固定し、私が進む間は玉ちゃんに仮固定してもらった。
2峰の岩峰が見えるあたりからはほぼツルベになる。岩峰は右の雪壁を登った。ここは岩を直上するルートもあるのだが、いったいどこから登るのだろうか、という感じであっが。ここを登ると残るピークは頂上である。ここからは2ピッチで上部に見える岩でいったん切る。この岩にハーケン(アングルとナイフブレード)を打って支点とする。この日は先行パーティが左にトラバースするように雪庇の薄い箇所の下部まで登り、そこからスコップでスタンスを切りながら垂壁状を登り、雪庇を越えていった。中間支点にはデッドマンとスコップを使っていた。下から見てるとそうでもなかったが急である。私もデッドマン2個とスノーバー1個を使った。垂壁状は先行パーティのスタンスに足が届かないし、ホールドにするために差し込んだバイルが抜けなくて、抜こうとするとバランスを崩しそうで恐かった。気がつくと、頂上まであと一歩になっていたので、バイルを思い切りさしこんで身体を持ち上げた。玉ちゃんを迎えてグネグネとした白馬主稜を眺める。
下降は大雪渓から。小屋までは緑のロープ沿いに下る。大雪渓の雪崩跡は支沢だけで本沢までも流れてはいないし、雪のブロックも谷川と違って軟らかい。落石も雪がグサグサなのでそれほど本沢まで落ちてきていなかった。足をとられながら苦労して下る。やっと白馬尻に到着。猿倉まではもくもくと歩く。谷が開けたあたりでタクシーに携帯電話を入れる。除雪された林道をガンガン歩き、二股でタクシーに乗り込んで、カラカラの喉にビールを流し込み、ペコペコのお腹に定食を詰め込む。帰りの車内ではいつものように旨い酒を呑みながら、玉谷くんはしゃべりまくった。次は鹿島槍ヶ岳の東尾根に行こうね。うっ、私たちってかっこいい・・・?。
デッドマン、スノーバー、ハーケンは必携(他パーティももちろん持っていた)。今回は雪稜なのでザイルは1本にした。しかし、雪稜といえども岩登りのバランスが必要。もちろん雪の確保技術と体力も… (ベテランがいるならば関係ない事項もあるけれど)。確保技術については、自分ももっと勉強や研究が必要だな、と思っている。そのためには…①とにかく登って自分(達)の経験の中から納得する方法を見つける、②他のパーティの確保方法を参考にする、③当然、本も読む、④パートナーと常に議論する(これってとっても大切なことじゃないですか?)、するのだ。本当に雪って難しいですよね。早くどこでも上手に歩けるようになりたいよ~。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。