<Climbing Report> 鹿島槍ヶ岳天狗尾根
2001年4月28日(土)~29日(日) L坂本多鶴(記)、玉谷和博
27日(金) 新宿駅23:50(急行アルプス)信濃大町駅5:08
28日(土) 信濃大町駅5:20(タクシー4680円)大谷原5:50/6:00 天狗尾根取付8:30 天狗の鼻14:40
GWだ!というのに新宿駅のホームには登山者が少ない。でも、久し振りに松戸山の会の野崎タカジ君夫妻と一緒になった。もうすぐ定年だって、しかし、定年っていうのも変な言葉だよなぁ、日本語は難しいよね。結局、車内も登山者は少なく、しばし歓談のあと眠りについた。
信濃大町駅でタカジ夫妻とともに玉谷、坂本は下車。白馬主稜隊の中野キジ坊、林RIN、高木タミちゃんと別れる。当初は我々を含め、白馬パーティは5名だったのだが、坂本という我が儘者(私だよ私!)がパスしたために、このような結果になってしまった。岩登り講習会での気持ちのズレ(たぶん私だけズレているんだろうけど)もあったし、自分ひとりで行く山行の方がアホになれるかもしれない(主稜は経験者のキジ坊と玉ちゃんがいるから大丈夫だと思って)と思ったんだけど(会山行以外はアホになりたいんですよ、まあ何を書いても言い訳にしかならないんだけどさ)・・・。まさか、玉ちゃんまでも行かないというとは思わなかったので、白馬主稜隊のみんな、ごめんなさい。(玉ちゃんのために弁解すると、玉ちゃん自身は白馬主稜に行きたかったみたいです…)と、いう訳で、上越方面に1泊2日で行こうと思っていたのが、天狗尾根行きになった。読んでいる人には全然わからないよね。
天狗尾根の初登は1933年の3月。そして、天狗尾根の北側は鹿島槍の北壁、南側は荒沢の奥壁があり、今回もそれぞれに1パーティずつが入っていった。私たちにはまだまだ遠いけど…。
信濃大町駅では、東尾根の時に乗ったタクシーの伊藤さんが案内人をしていた。GW中は案内人で乗車の振り分けなどをするらしい。登山者よりも多い救助隊の方々に計画書を渡して、再び大谷原へ。早々に準備して出発する。東尾根と同様、橋を渡って左の林道に入り、車止めの先で、分岐する右手の林道に入り、東尾根ルートと別れる。この後、林道沿いに大川沢の右岸を歩く。雪が被っていて所々は雪斜面のトラバースになった(もっと雪が多い時は、赤布の下がっていた所から河原に降りちゃうんだろうね)。発電所の吊橋で左岸に渡った先が渡渉点、どこから渡ろうか…、としばらく眺める。水量は膝くらいだが、流れも緩いということもなく、う~んと腕組みしていると(知っている人は知っているけど、我々は渡渉が苦手です)、4人パーティが来た。リーダーっぽい人は何も言わずに裸足になって渡り、何も言わずに靴を履いている。他の3人もそうだ。傍で見ていると、もしかしたら水は冷たくないのか…と思うほどに。続いて2人パーティが来たので、意を決して渡渉開始。冷たくないのかな…と思った水は、思いっきり 「冷た~い!!!」、足先は真っ赤。後続の2人パーティも我々と同じように叫ぶ。
右岸を少し歩くと荒沢の出合に。荒沢の右岸から渡渉もなく左岸に移り(ホッ)、ゴーゴーと水が流れる脇をトラバース気味に歩いていくと、天狗尾根に取り付けそうな場所に出た。そうかな、と思って見渡すと、木に赤テープが巻いてある。先ほどの4人パーティはさらに荒沢の奥に入っていった。荒沢の奥壁を登るようなパーティは、冷たい水の渡渉なんて何でもないのだろうな。我々の後ろで叫んでいたパーティはもちろん、天狗尾根であった。
取り付きはブッシュを掴みながらの急斜面の登り、支々稜線に乗るとカタクリが咲いている。ピンクの花を見ると春だなぁ~という感じだ。その先もブッシュをっかみながらの登りが続き、少しずつ雪が出てきて、雪面の登りになったら支稜線(1500m付近)に出た。この先、尾根はいったん細くなって広くなる。その広い斜面を登ると、やっと稜線上(1650m付近)。天狗の鼻までが見える。ここら辺りも幕営適地と書いてあるところだ。
なだらかな稜線歩きが終わり、斜面が急になる手前でハーネスを着ける。我々に先行して若手の男2人パーティが登っていく。まずは短い雪壁登り。ここが第一クーロワールかな…、と思いながら登ったが、違っていた。稜線上は雪庇が崩れていたり、崩れそうなところがあったり、という感じ。谷筋では時おり雪崩の音がドカ~ンと響いている。本物の第一クーロワールは、トレースが階段状であったが、最上部は笹面が出ていて、残置シュリンゲのぶらさがった木を掴みながら、恐々と右に回りこんで登った。第ニクーロワールもトレースが階段状についていたが、ここも上部は雪面がわれて笹面が見えていた。第一も第二も下部が崩れたら、一気に雪崩れ落ちるだろう。斜面を登りきると、本日の幕営地である天狗の鼻についた。我々を含めて天狗尾根を登る3パーティはテント、北壁を登るパーティは雪洞を掘っていた。荒沢に入っていったパーティの姿も見えた。17時に白馬主稜隊のRINちゃんからの無線を待っていたが、携帯電話に連絡が入ってくる。無線は通じないんだね。東尾根の時と違って夜は風もなく、快適に眠ることが出来た。
29日(日) 幕営地5:45 小舎岩7:00 鹿島槍北峰9:00 冷池11:30 西俣出合14:00 大谷原14:30(タクシー5680円)信濃大町駅15:00(入浴)16:00(大糸線)松本駅16:52(食事)松本駅18:31(特急あずさ)新宿駅21:06
翌朝はうす曇。5時45分に出発する。コルまで下ると、北壁に入ったパーティのトラバースルートがついていた(カッコイイ…)。我々は高度をぐんぐん稼いで小舎岩へ。ここは小屋の形の岩を巻くだけである。東尾根を眺めると第二岩蜂で12人くらい待っていて、ものすご~い混みようだ。小舎岩の先の岩場でザイルを出す。1ピッチ目は30mで玉ちゃん。ホールドはあるが中間支点が途中まで取れない。2ピッチ目は5mほどの岩の乗越しで坂本。登りおえたところでザイルをしまう。
荒沢の頭まで登れば、あとは先々週通った道。北峰の手前で北壁側を見ると、雪壁を稜線に向かって登ってくるパーティが見えた。真っ白な雪面の中には彼らと彼らのトレースしかない(スゴイ!見ているだけも気持ちいい)。鹿島槍の南峰までくると、ガイドさんに連れられたおばさんパーティとかもいて雰囲気も変わってくる。アイゼンをはずして雪の溶けた登山道を下る。こないだは風にビュウビュウ吹かれたけど、今回はラクチン。さらに冷池小屋も開いていて、乾いた喉にジュースを2本ずつ流し込む。岳樺の国本さんにも偶然に出会う。
予定では爺が岳の東尾根だったけど、たぶん雨になるからと赤岩尾根から下山する。グングン下って、タクシーで七倉荘に行ってお風呂に入って、松本でビール飲んでカツを食べて、あずさに乗ったら、タカジ君夫妻にまたまた出会った。今回はタカジ君に始まってタカジ君で終わるという山行であった。実は後半のGWも始まりはタカジ君かもしれないんだよね。
家に帰ると、鹿島槍の何とか沢に入ったパーティが遭難した、と母親が言っていた。今朝の新聞で見ると、荒沢に入った4人パーティだった。カのある人たちが事故に遭うなんて何だか複雑な気持ちだ…。彼らも北壁に入ったパーティも、アプローチではアイゼンなんて使わないって感じ(アイゼンがなくても歩けるんですよね)。自分なんて道具があるから登れる奴で、本を読むと昔の人たちはスゴイなぁって、いつも思う。自分のカ、技術を信じているんだよなぁ。私は自分の力や技術をそれほどに信じられない。半分、もしくはそれ以上を装備に頼っているだろうから。だから、もし落ちたらどうしよう…ってびびっちゃうんだろうな…。でも、そういう風に葛藤しながらも、何か素晴らしく爽快な気持ちにはなりたい。北壁を登ったパーティのような眩しいトレースを自分もつけてみたいよ。
今年に入ってからは、八ツの東面では旭岳東稜を登った翌週に隣の権現東稜、今回は鹿島槍の東尾根を登った翌々週に隣の天狗尾根、という山行をやったけど、自分が登ったところを眺めながら登るのは面白い。面白かったのに、松本駅でまた玉ちゃんと口論になってしまった。私の精神状態は最悪なんだろうな。早く治さないとね。