~クラックのマルチピッチ~
SUPER RAIN(5.7~5.10b、230m、7ピッチ)
2005年12月30日 坂本(記)、玉谷
『波勝崎から遊覧船に乗る。遊覧船から見る赤壁※は、いかにもボロ壁。この壁を登った初登者の気合いに感心する。今回も壁を見て終わりか、と千貫門へ向かう途中、海岸を見ているとなにやら岬の先に硬そうな壁が見える。200mはあるだろうか』(岩と雪158号より抜粋・中略)
赤壁に新ルートを作れないだろうかと、伊豆にやってきた同人サヘルの船尾修と間野静雄は海金剛を見つけ、1992年11月、初登ルートであるVAGABOND(5.9、AA2)を開拓する。
その後もエイドルートが開拓されていくが、1998年11月に鴨下賢一と真達慶次郎によって、2本のオールフリールートが登られた。そのうちの1本がSUPER RAIN・・・。NOVEMBER RAIN(10b、AA3)の一部別ラインをとってフリー化されたルートである。
(※赤壁の初登は85年11月、雲表倶楽部の藤原雅一氏ほか)
そして、我々にとってのSUPER RAINは2004年の年末。登ってみようと柏瀬さんから大きいサイズのキャメを借りたものの、城ヶ崎の練習で明らかに力量不足、海金剛までも行かずじまいであった。2005年はもうクラックの練習ばかり。何とか5.10台の前半がリード出来るようになり、ようやくSUPER RAINが近い目標になってきた。
『いよいよ海金剛へ…SUPER RAINへ…』
民宿4:00(車移動)キャンプ場5:30/6:30(アプローチ)取付き7:30(7ピッチ)終了点13:30/14:00(懸垂下降7ピッチ)取付き15:00(アプローチ)キャンプ場16:10/16:30(車移動)民宿18:10
30日の朝、まだ外は真っ暗だ。忍び足で伊豆高原の民宿を出て、下田から松崎街道経由で雲見オートキャンプ場へ。朝御飯を食べ、テーピングを巻いて、まだ薄暗いなか出発する。アプローチは前々日にキャンプ場の奥さんに聞いて偵察も済ませたので、迷わず入り江への下降点へ。ここはフィックスがあるが、ロープを出して10mほど懸垂下降する。ここから海岸沿いの踏み跡をたどりながら目の前の中央稜を越え、さらに踏み跡沿いに素直に登りきったところがSUPER RAINの取付きだ。
1P目(30m 5.7)は玉ちゃん。ブッシュ混じりの赤いコーナークラック、ハンドジャムを交えながら登り、途中の立ち木テラスでビレイ。今回は60mのシングルロープ1本で登ることにした。トップは空身、セカンドはザックを背負う。
2P目(20m 5.8)は坂本。そのままコーナーを登り、フレークを右から越えて、コーナーに戻りフィンガーで登る。コーナーが右上して、ホールドが続けられそうな辺りでスラブを右にトラバースして立ち木でビレイ。足元のフレークで中間支点もとれるので、思ったより怖くない。セカンドの玉ちゃんがブッシュの踏み跡をそのまま15m右上し、立ち木でビレイ。
3P目(30m 10a)は坂本。目の前のクラックを直上し、バンドを左へトラバース。枯れ木のところから右上するフィンガークラックを登る。枯れ木からは支点が小カムだったので、リードで一番緊張したピッチ。次のピッチが始まるブッシュのテラスでビレイ。
1P目はコーナー 2P目はコーナーから 3P目はクラック直上から
スラブをトラバース
4P目(30m 10a)は玉ちゃん。外傾した右上クラックからオフウィズサイズ(肘サイズ)のクラックを直上。右上クラックは外壁にスタンスを探すと安定するのだろうが、セカンドでも結構怖かった。オフウィズの右にもクラックがあるが浮石だまりなので間違えないように。ここも立ち木でビレイ。外傾クラックはまだ苦手、5P目より難しいかも。
5P目(30m 10ab)は坂本。ビレイ点から階段状を左上気味に登り、少し上に見えるフィンガークラックを目指す。ハングの手前で赤キャメが決められるので安心感はあるものの、落ちたくないテンションをしてしまった。良くみるとスタンスがあり、見つけたあとは一気に越える。登ったところが下部要塞の大テラス。RCCボルトの支点にカムをプラスしてビレイ。このテラスは岩の破砕帯。
6P目(30m 5.9)は玉ちゃん。ビレイ点右のオフウィズクラックを登り、そのままクラックを直上するか右のスラブを登る。クラック直上は岩の集合体という感じで、破砕帯を見た直後では大丈夫なのかなぁ・・・と玉ちゃんは右のスラブへ。ビレイ点は大テラスのブッシュの懸垂支点。セカンドの私は出だしザックがひっかかってなかなか身体があがらず、さらにカムの回収で完全に腕がパンプ、最後はA1してしまった。残り2ピッチなので、ザックはここに置いていった方がいいかも。
4P目は外傾クラックから 5P目は階段状からフィンガー 6P目はテラス右のクラック
7P目(50m 5.8)は玉ちゃん。順番は私だが、腕がパンプしたので代わってもらう。ビレイ点より1段上がった右のハンドクラックを登り凹角に入るが、凹角では中間支点がとれなさそう。クラックのあとは右のルンゼに突入する。終了点はまたもや岩の破砕帯。下部要塞から上はそんな感じで、あまり気持ちが良くなかったが、冬の澄み切った青い空、そして眼下には青い海、ロケーションは最高である。
『不安だった下降は…』
登攀終了でいつものようにガッチリと握手。結局、我々のほかは誰も登ってこなかった。登りきると風がモロに当たって、さすがに寒く、下降点を探して移動する。
まだ、時間に余裕はあるが、下降でロープがひっかかる事が多いようなので、昼食はお預けで安全圏まで下降を開始する。今回はシングル1本なので登りと同じピッチで降り、残り2ピッチという所でやっと昼食。ロープは投げずにトップが携行して下降し、回収時はロープが落ち始めても引くようにしたが、問題なく、取付きまでスムーズに戻ることが出来た。
7P目は一段登ってクラックへ 最初の懸垂はほぼルート沿 青い海を見ながらの懸垂下降
今回は事前に決めたわけではないのに、フィンガーのピッチが私、ハンドからオフウィズのピッチが玉ちゃんとうまく分かれたので、自分たちの手の大きさを有効に使えたし、5.10台を含むマルチピッチ、それもクラックルートを登れたことは、後半は落ちたくないテンションしたものの、一歩前進したようで嬉しかった。やっぱりマルチピッチは達成感があるなぁ。次の目標ルートを決めて、苦手部分克服。10台ならどんなルートでもOK!を目指せ。
使った装備
シングル60m 1本、キャメロット(3.5まで)2セット、エイリアン2セット(黒と青は1本ずつ)、ただカムは全ては使っていない。ヘルメット着用、捨て縄も持って行った方がいい。
今回の行程:12月28日(水)〜1月2日(月)
ベースはクライマーの間では有名らしい大重丸(1泊3食付6000円、正月は1000円up)。
28日は海金剛の偵察、29日は保科雅則ガイドの講習会で城ヶ崎日蓮崎5.10c〜10dのルート、最近SUPER RAINを登った保科さんやK教授から情報を伺う。30日が大目的の海金剛、31日は筋肉痛などでレスト、1日は日蓮崎、2日に松戸に帰った。
コメント
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