<山行報告書>沢の山旅 ~黒部源流に遊ぶ~
8/12-15 北アルプス赤木沢と黒部源流の山々
メンバー:L玉谷和博(記)、坂本多鶴、渡辺
「今年は沢にガンガン行こうぜ!」またまたいつものように飲み屋で話が盛り上ってからというもの、へたっピながら僕も沢登りの世界にハマッてしまったのです。沢登りの魅力って何だろう?「夏はやっぱり沢ヨ」なんたって水流を歩く清涼感が気持ちいい。それと、次々と現れる滝、釜、瀞、ナメ、ゴーロ等の渓谷美。「すっげぇ!/信じられない/うわ~美しい!/おぉ!かっこいぃー/ひぇ~怖い」なんて大騒ぎで、ドキドキわくわくしながら登っていて、疲れることも忘れちまう。また、滝を攀り、トップでリードする緊張感や完全遡行の充実感がたまらない。つねに、より困難を求めてグレードを上げていく、スポーツ的なアルピニズムの精神も心を揺さぶるのです。そして沢の夜は、焚き火と好きな仲間と旨い酒があればもう何も言うことなし。そんな「沢登り」が日本独自の登山スタイルだというのもウレシイ。やっぱり沢はイイのです。
北アルプスに沢の初心者の僕らだけでも登れる沢がある。しかも飛びっきり美しい沢で、も~最高!山中八千代さんに話を聞いて知り、山渓の写真を何度も眺めては憧れていた。黒部川上流の赤木沢を遡り、五郎、鷲羽、水晶、赤牛といった黒部源流の山々を巡って読売新道を黒部湖へ。おまけに針ノ木も登ってしまう、という欲ばった計画をひっさげ23:58上野発、週末とお盆の帰省ラッシュで超満員の「急行能登」に乗り込んだ。
8/11 上野23:58=(JR)
8/12 富山6:03/6:18=有峰口6:52/8:40=(バス)折立9:45/10:00 太郎兵衛平14:05/14:20 薬師沢小屋17:00 (小屋泊)晴れ
「ばやばやでぇどんならんちゃ。おまっちゃらっちゃ先にぃ茶でも飲まれま」富山地鉄有峰口駅は駅舎も駅員もとても素朴で、のんびりしている。こちとら先を急ぐので「なんしとんがいちゃ。はがゃしぃ早ょせぇま。だら」(※富山弁)と言いたいのを抑え、結局1時間遅れで折立を歩き出す。ほとんど寝てないので思うようにペースは上がらない。
赤木沢はアプローチが長い。ごったがえす太郎平を経て、赤牛岳や雲ノ平を眺めながら薬師沢へと急ぐ。今宵のビバーク地は小屋から20分程黒部本流を遡った所にある、知る人ぞ知る(幻の?)天場。焚き火と満天の星とイワナと宴会…。のはずだったのに、途中で山岳パトロールに説教され薬師沢小屋へ連行された。てなわけで今宵の宿は一泊5000円也の黒部リバーサイドホテル、台所の隅に押し込められた。トホホ…チキショーメ。
8/13 薬師沢小屋5:30 赤木沢出合7:10/7:20 大滝下9:20/9:30 終了点10:35/11:20 稜線 11:50 黒部五郎岳13:20/13:40 五郎平15:30 (テント泊) 快晴のち曇
小屋を早々に抜け出し、沢装束に身をかため黒部川本流に入渓する。赤木沢の出合は素敵な女性との出逢いのような胸がときめく美しい所だ。本流は幻想的な広い淵で右の岩をへつれば、すぐに50mほどのナメ滝が現れる。あっけらかんと明るい青空と這い松の緑と雪渓とキスゲのお花畑。赤い沢床とキラキラ輝く滝の飛沫。この涼感。「ひょ~最高!」釜があると真っ先に飛び込むのは当会の菅原文太(自称)ことナべさん。さすがナベとカマは相性がいい。美しい釜に吸い込まれるように3匹の河童が泳いで、はしゃいだ。
沢というと丹沢や奥多摩のような、暗い/狭い/じめじめ/危険といったイメージが浮かぶけど、赤木沢はとにかく開放的で明るくて美しい!!まるで桃源郷だ。滝はほとんど直登できるし、35mの大滝を除けばザイルはいらない。迷わず右側の草付きから高巻き、中俣乗越をめざして約3時間程で夢のような快適な遡行は終わってしまった。あとは余韻を楽しみながら黒部五郎岳への稜線散歩を続けて、コバイケイソウと五郎沢の流れるカールの中を五郎平へ。今回の晩飯は多鶴ちゃんが腕によりをかけて作る、タージルさんスペシャル(インド、イタリア、中華料理)。酒が旨い。飲むほどに酔うほどにいつものように話は白熱していき、お約束通りに多鶴ちゃんはランボーものに変身したのでした。
8/14 五郎平5:55 三俣蓮華岳8:25/8:35 鷲羽岳11:15/11:25 水晶岳14:10/14:25 野口五郎岳17:25/17:30 野口五郎岳キャンプ地17:45 (テント泊) 晴れのち曇
三俣山荘でコース状況を聞いてショック!先月の大雨で読売新道は大荒れで通行不可、黒部湖の渡し舟も運休だという。こだわっていた赤牛岳を泣く泣く諦めて、裏銀座にコースを変更する。水の無い水晶小屋にザックをデポして、ガスに巻かれた水晶岳をピストンする。足が重い。3日目なので体が山に慣れてきた、と言いたいところだけど、どうも咋日の沢登りで体がふやけちまったみたいで妙に疲れる。沢を登っている時は、あんなに楽しくて「遊んでいる」って感じがしたのに今、縦走していて「なんてつらい」と感じるのは、いったいどうしたことなんだろう。それにしても気が休まるのは、咲き乱れる高山植物のお花畑。チングルマ等、名前のわかるものだけでも31種もあった。
8/15 テン場6:15 烏帽子小屋8:50/9:10 高瀬ダム11:20/11:30 =(タクシー)大町温泉郷・薬師の湯=(タクシー)信濃大町14:19=(JR)新宿18:30 快晴
朝から快晴なので、裏銀座コースのパノラマを眺めようと野ロ五郎の頂上に上る。ウ~ン、まさにアルプス大展望。東から餓鬼-燕-大天井-常念-槍-穂-笠-鷲羽-水晶-赤牛-薬師-立山-剱-針ノ木-後立山連蜂へと連なる山々が朝の光に映える。途中、コマクサの群落のなか学生時代の山仲間と10年ぶりに偶然再会した。旧い仲間と新しい仲間、なんだか照れくさくて、恥ずかしいくらい感激して… 山の仲間は宝です。
烏帽子小屋までゆっくり北アの展望を楽しんだあとはブナ立尾根を一気に駆け降りた。
帰りの電車は僕の好きな時間です。すっかり湯上がり美人に変身して、日焼けとビールで真っ赤っかになった満足げなイイ顔を並べて盛り上がる。口から泡を飛ばして、次は湯檜曽本谷だ/黄蓮谷だ/上ノ廊下だ/いやいや北鎌がいいぜ/読売新道から赤牛岳も絶対に行くぞ。山っていうのは行けば行くほど、ますます行きたい所が次から次へと増え続けて、夢がどんどん広がってく。そう、お楽しみは終わらないのです。
想像以上に素晴らしくて優しい赤木沢と、お花畑のジュータン、北アの大展望と、メいっぱいの充実感!そんな僕らの夏休みでした。
<費用>
松戸~富山(JR) 8150円、富山~有峰ロ(地鉄) 1000円
有峰口~折立(バス) 2700円、高瀬ダム~大町温泉郷~信濃大町(タクシー) 2700円
信濃大町~松戸(JR) 6870円、薬師沢小屋(素) 5000円
五郎平(幕営) 500円、野口五郎岳キャンプ地(幕営) 500円 、他食費