「穂高での岩登りの素晴らしさを写真で紹介する」「ルートを誤ったり、自分の力を過信したりする遭難を防止する」ことを目的として、本書は企画された。編集にあたったのは石岡繁雄率いる岩稜会。穂高は彼らの庭のようなもので、かなり力のある山岳会だったのだろう。取り付きから終了点まで写真をふんだんに使った岩場のルート解説本は現在までも意外と少なく、とくに当時としてはユニークで画期的なものであり、取材の苦労もさぞかし大変だったに違いない。(実際に制作には5年かかったらしい。)遭難を防止するという目的に関しては石岡氏らしい視点で書かれてあって、まえがきに8ページ(2巻にも)もさいていることでもわかる。 また独自のグレード表(RCCグレード以前)も、今では興味深い。
この本は古く、カイドブックとしての役割はもう終わっていると思う。だけど、写真を眺めているだけでも当時のクライミングの様子、技術や装備、当時の小屋や河童橋の写真、また会員や登山者のいきいきとした姿までも見ることができて貴重。
PS;本書には、クロス貼りハードカバーで貼箱入りの「特製本」 と、ソフトカバーでキカイ箱入りの「普及本」の2種類がある。
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