「日本のクラシックルート」という企画が雑誌『山と渓谷』で連載されていた(’93年4月号~’94年3月号)頃に、僕らは岩をかじり始めた。美しい写真がとても印象的だったのでよく覚えている。でも憧れのアルパインルートは夢のまた夢。それから3年ほどして待望の本書が発売されたときには、3冊も買ってしまったほど嬉しかった。こういったルートに連れていってくれる先輩のいない僕らにとっては、通称“茶本”はバイブルになった。
プロガイドや先輩についていくだけの山なんてアルパインじゃない、ってイキガッっていたね。自分の力で勝ち取って、ひとつづつ経験を積み重ねていくことに大きな充実感があった。本書に収録された74本のルートのうちでは37本に登ったことになるけど、なかでも北鎌尾根と前穂北尾根は冬にトレースできたことがとりわけ嬉しかった(茶本では春なので)。本編の他に、各々のルートにまつわるエピソードが綴られた16編のコラムもまたイイ。山書マニアになるきっかけもこの本のせいかもしれない。ともあれ、後輩にはまずは必ず薦める本です。
PS;先日、保科雅則氏に「茶本の姉妹編のような、気合の入った『フリーのクラシックルート集』をぜひ作ってほしいです。」とお願いしてみた。ショートルートからロングルートの★★★ルートを美しい写真やコラム(もちろん保科氏の蔵出しの初登時のショットも!)とともに紹介。しかもゲストで初登者が再登するシーンなんかがあったら、もう卒倒ものですよ。
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