1982~1991/白山書房
クライミングの専門誌と呼べる雑誌はこれまでに三誌しかない。正統派アルピニズムを標榜する名門誌『岩と雪』(と、その後継誌??『ROCK&SNOW』)と、この『クライミングジャーナル』だ。四代目の編集長を務めた“ガメラ”こと菊地敏之氏は、著書『我々はいかに「石」にかじりついてきたか』(2004/東京新聞出版局)の中で、「イワユキは本棚にしまっておくもので、クライミングジャーナルは網棚の上に置いてくるものだ。」と、あるクライマーの名言?を引用しながら自嘲ぎみに揶揄して(充分に愛着が読み取れますけど)述懐している。いやいや、そんなことはありませんよ。いま改めて全号を読み直してみても、その内容の濃さ・面白さに時間がたつのも忘れてしまうほどはまってしまう。「冒険的クライミング」や「マイクライミングライフスタイル」といった特集もイイし、遠藤甲太・大内尚樹氏らの筆による「クライマーの系譜」は、小川登喜男・北条理一・小谷部全助・小林隆康・山口清秀・立田實…、資料の少ない名クライマーたちを研究したレポートでとても興味深い。また、ロングインタビューや対談にも多くのページを割いていることもポイントが高い。(ちなみに『岩と雪』では、№164の吉田和正インタビューしかない。)山崎祐和・戸田暁人・室井由美子・長尾妙子・山野井泰史・平山裕示・渡辺斉・大岩純一・大岩あき子・エトランジェ・藤原雅一・南裏健康・保科雅則氏ら…、いまも現役で活躍するトップクライマーの若かりし声(かなり過激です!。なんせ、「いま一番過激なスポーツマガジン」ですから)も貴重だ。インタビュー記事が多いせいか、クライマーの表情・心情が生き生きと伝わり、当時の熱気がダイレクトに感じられる。とくに、「吉尾弘×檜谷清×柏瀬祐之」の対談や、渡辺斉インタビューなどは絶品!。
創刊号の編集後記には、「単なる情報誌にとどまらず、クライマーの心情・人間性をもダイナミックに捉えるべくグラフィックに、アクティブに誌面を創りたい。」と、初代編集長・蓑浦登美雄氏による抱負が書かれている。これは、クロニクル中心の(どこか味気ない)『岩と雪』に対するアンチテーゼであり挑戦状だろう。本家「イワユキ」にはできないことをやる。自由にのびのびとした誌面づくりが痛快で、それが「ジャーナル」の魅力になっている。
PS;最近の雑誌(ロクスノのことですが)の巻頭カラーは、なんだかコンペの記事ばかりなのはいかがなものだろうか。(カラーである必要もないのでは?)海外の雑誌は美しい岩場のクライミングショットやアルパインの記事がメインなのに。また、時代を作った往年の名クライマーの紹介や歴史にほとんど触れていないのもどうだろう。「ジャーナル」や「Alpinist」は先達をリスペクトした記事も多いのに。まぁ、ロクスノは前よりは良くはなったけどね。
ホントに好きな人が作ると面白いんだろうね。人が好き、山が好き、道具も好き、本も好き・・・。
クライミングジャーナルの創刊当時は編集部の賑やかさが伝わってくる感じ。
投稿情報: 管理人-鶴多郎 | 2007/04/02 21:09