1958~1995/山と渓谷社
いまから12年ほど前の話。僕らが岩登りをかじり始めた時期は、雑誌『岩と雪』がちょうど終刊してしまった頃で、もちろん『クライミングジャーナル』などはとっくの昔に休刊状態。技術本といえば、岩崎元郎の『沢登りの本』とか『雪山』とかいう本しか見当たらなかった(ような気がする)という暗黒時代でした。とりあえずカモシカにあった『岩と雪』の最終号を手にしたものの、書いてある内容はまったくわけがわからず、しばらく後悔した。(そりゃそうだ、それまでは、ヤマケイとかジョイとかしか知らなかったんだもの。)それでも、古本屋でバックナンバーを発見してはポツリポツリと買い揃えていたのは、当時 新刊のクライミング誌がないという不遇の時代だったからだ。話は飛ぶが、「岩雪」終刊から再生「ロクスノ」12号(1から11号はあまりにもヒドイものだったので論外)までの約6年間は、心あるクライマー諸氏は皆かなり困ったようだ。情報と刺激を求めて、あるいは記録を発表する場を求めて、アルパインクライミングのMLが盛り上がったり、機関誌『きりぎりす』やフリーペーパー『RUN OUT』が大きな(?)話題になったりした。
イワユキといえば編集長の池田常道氏の存在が大きい。『山と渓谷』の717号(1995年4月号)には、『「岩と雪」の再生をめざして』と題して、廃刊になる『岩と雪』の歴史を振り返るという記事が特集されている。日本を代表する新旧8人のクライマーと池田氏による座談会もあって興味深い。そのなかで山野井泰史は、「山と渓谷」とか「岳人」を全部読むよりは「岩と雪」のクロニクルを一行読むほうがよっぽど重要だった。その一行に自分の名前を載せたい。そのために自分の登攀能力よりもっと難しいことをやっていた。だから(岩雪の)クロニクルのおかげで自分も鍛えてもらったな。」と語っているが、そうやって多くのクライマーに刺激を与え続けてきた重要な存在だったことがわかる。
その後、首尾よく幸運にも全号をそろえることができたが、一時休刊をはさんで38年分。つくづく凄い雑誌だと思う。これはそのまま日本のクライミング史を知るうえで一級の資料だ。もう こういった雑誌が出版されることはないんだろうか?「岩と雪」がきちっと編集されていたからこそ『山岳年鑑』としてきっちりと記録を纏めることができたのだろうし(『山岳年鑑』は1995年以来発行されていない)。アメリカには『Alpinist』という素晴らしい雑誌があるというのに…、残念。
PS;169号で終わったはずの『岩と雪』だが、じつは幻の170号が存在する。これは2005年に編集長の池田常道氏が山と渓谷社を定年退職された際に催された「池田常道さんを励ます会」にて配られた非売品。とは言っても、内容は岩雪の記事からから22編ほどピックアップし再編集されたもの。裏表紙は数多くの名クライマーたちとのツーショットの写真で飾られている。(個人的には、「吉田和正インタビュー」がチョイスされていることが妙にうれしいのです。)コンプリートをめざす山岳書コレクターとしてはどうしても欲しかったのですが、神田の悠久堂にてゲットできました。わーい。
『岩と雪』 のバックナンバーは、100号以降のほうが圧倒的に面白いと思うのだが、その100号以降はあまり売れなかったようで、山岳書専門の古書店をまめにパトロールしてもほとんど見かけることがない。運よくみつけたら即買うべし!
PS2;こんな別冊付録もついていました。ルート図集には初登者の名前や初登日が記載されているので記録としての資料価値もある。また、詳細なアプローチ図も親切だ。昨今の同社のルート図(100岩場)は、なぜかわかりずらいのが気になるなぁ。地元とのアクセス問題が多発しているので、わざとわかりにくくしているのでは?と勘繰ってしまうのは僕だけでせうか?
(写真の大きさがバラバラになってしまいました。スンマソン)
最近のコメント