2010/山と渓谷社
「道具は揃ったかい?ヒマラヤもいいけど ウラヤマもいいぜ!遭難するなら、ぜひ当店内でドーゾ.」
「最も高いとこへ登った山ヤがえらい登山家なら、遭難後昇天した山ヤは最高の登山家である.」
辻まこと(本名・辻 一、1913~1975)は、フリーのイラストレーター・画家・詩人・エッセイスト・作家…で、山スキーと山歩きをこよなく愛した自由人である。その生き方や作品は多くの人の共感を呼び、現在でもその人気はまったく衰えていない。
本書は、山とスキーの専門店「秀山荘」創業30周年を記念して、少部数出版された私家本の復刻本ですが、こういったマニアックな私家本までもが、今復刻されることに驚くとともに、相変わらずの人気の高さをうかがわせる。本書に目をつけて、文庫本としてではなくてほぼ完全な形で復刻した山渓もエラい!
『山からの絵本』(昭41/創文社)や『山で一泊』(昭50/創文社)などの著作とはまた違って、自由度が高いせいか、肩の力が抜けたユルイ作風。トボケたような軽妙なタッチの絵と痛烈な風刺やユーモラスな文章が、イイ感じで楽しい。
創業以来、親交のあった(居候していた)氏が20年にわたり雑誌「山と渓谷」「岳人」「山と高原」などに描き続けた秀山荘の広告を、スクラップブックにランダムに収集したような編集になっていて、どのページを開いてもひとコマ漫画のような小さな広告のなかにも、独特の『辻まことの世界』が広がっています。
写真中は昭和56年に白日社から出版された元本です。山渓版のような紙の表紙カバーではなくて、厚手のビニールカバーが 付いている。写真右は、おそらく特装本。厚手の茶色い布地に、「秀山荘」のロゴと背の書名が金箔押しされている。ただし奥付には特に記載がないので、何部製本されたのかは不明。
PS1;右下の画像は、当時の本書出版の広告チラシ。秀山荘版「辻まこと広告マンガ集」となっている。
なお今回の山渓版では、慶応大学スキークラブ「デイモンズ」の会報「DEMONS」から6点の広告が追加され、辻まこと年譜も付されている。
PS2;ちなみに現在の池袋「秀山荘」は、当時の「秀山荘」とはまったく別物である。たしか10年ほど前に倒産してしまい、近くのS.R.C(スポーツ流通センター)の経営になったはず。その後、S.R.Cも倒産したという噂も聞くが、長いこと行っていないので現在どうなっているのかはよくわかりませんが。
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