2000/山と渓谷社
“山と渓谷社創立70周年記念出版”と銘打ったヤマケイ・クラシックスシリーズのうちの一冊。
ただの新装版か?と思いきや、さに非ず。まったく油断していました。“新編”と書いてある意味に気付かなかった(俺だけかな?)。いまさら紹介するのもなんですが、山岳書の枠を越えた名著です。
本書は単なる新装復刻版ではない。新しく生まれ変わったと言ってもいい。朋文堂初版を持っている人も、本書を読んだことがない若い衆も必ず買って読むべし!
編集は遠藤甲太氏。さすがに完璧です!東京登歩渓流会の古い会報や雑誌を丁寧に調べあげており、これまでの「風雪のビバーク」では見過ごされていた北岳バットレス中央稜や、滝谷第一尾根積雪期初登などの重要なものも含む記録文を発掘、追加収録されている。もちろん遺書も完全に復刻。 また、当時の時代状況や登山史上の意味あいなどの詳細な解説文があるのでとても読みやすく、行動も思考も含めて多角的に、改めて松濤明の凄さを知ることができます。
26歳という若さで駆け抜けた孤高のアルピニスト・松濤明。その峻烈な生きざまと死にざまは、これからも、いつまでもクライマーの心を大きく揺さぶってやまないだろう。
写真中は、安川茂雄編集による遺稿・追悼集『風雪のビバーク』(昭35/朋文堂)。この本により松濤明は広く世に知られることになる。今回のような記録の解説が付されていないので、現在読んでも記録の価値がわかりにくいが、遭難から10年しか経っていない頃に発行されたことを考えるといたしかたないことか。
写真右は、登歩渓流會の遭難報告書『風雪のビヴァーク』(昭25/非売品)竹越利治・編。遭難・捜索の報告がメインで、松濤明本人による文章は遺書となったメモのみ。
PS;同じクラシックスシリーズの他の本は未だ残っているのに、この本だけは長いこと売り切れていたが、このたびヤマケイ文庫第1回配本として刊行されたもようです。
先日カモシカへ行ったら、ラッキー氏いわく「なんか(このヤマケイ文庫も)、風雪のビヴァークばかりが売れるんだよねぇ。」…人気は相変わらずのようです。やはり、丁寧に作られた良書が売れるのは嬉しいものです。
貸してください。
投稿情報: 宋一孝。 | 2010/11/15 09:40