3 山書マニア 『技術書』

5 件の投稿

2012/01/13

「岩登り術」 藤木九三

岩登り術 Photo_12


大正14/RCC事務所榎谷徹蔵

藤木九三・榎谷徹蔵・水野祥太郎ら関西のクライマーが集まり、日本でははじめての岩登りを専門とするグループ RCC(ロック・クライミング・クラブ)が大正13年(1924年)に神戸で誕生した。この本は、研究資料として主にその会員向けに頒布されたもので、日本初の岩登りの技術解説書だ。発行部数は300部弱といわれている。

日本最古(81年前!)の技術本ということで、とっても興味深く読める。クライミング用語を和訳するのにかなり苦労したらしい。アップザイレンを「懸垂」、ザイルリング→スリングを「捨て縄」など。藤木九三は、ネーミングのセンスがあったようだ。ちなみに甲子園球場のアルプススタンドも藤木のネーミングらしい。

PS;写真右は裸本、左はカバーです。カバー付きはおそらく貴重かと思いアップしました。

2008/01/23

「山への挑戦 -登山用具は語る -」 堀田弘司

Photo 1 1990/岩波新書

岳人レポート№8(2002年発行の会報より再録)~
 堀田さんと面と向かってお話ができるようになったのは、つい2年ほど前からだったと思う。僕らが三ツ峠の四季楽園に通い始めたのが3年くらい前からだけど、「あっ、堀田弘司さんだ…。とわかっていても、あのいかにもとっつきにくそうなギョロ目である…。とてもとても僕らのような若造が声をかけるなんてことはできなかった。
話ができるようになったキッカケは、酔った勢いで「僕らは吉尾弘の最後の弟子なんです!」と言ってからなのか?それとも、いつもザックに忍ばせておいた堀田さんの著書『山への挑戦』に、飲んだ時に「すいません!サインをしてください。」と頼んだ時からだろうか?はたまた多鶴先輩が酔っ払って泣きながら俺を殴っている光景を見ながら、「泣いたり、笑ったり、怒ったり、忙しいねぇ!」と笑顔で(あきれて)声をかけられてからなのだろうか?定かではない。しかし、いずれにしても僕らがいつものように酔っ払っていたことだけは確かである。話をするようになって、意外と気さくで話し好きな人柄を知った。RCCⅡの奥山章、吉尾弘とのガイド協会設立前夜の話。上田哲農、長谷川恒男、森田勝、小板橋徹…とのエピソード。山と渓谷社時代の話。はたまた、エミリオ・コミチやリカルド・カシンなどなど。貴重で楽しい話をいろいろと聞くことができた。武骨だが、オシャレで博学の紳士だった。文学、音楽、芸術、歴史…、幅広く、知識の豊富な人だった。「下降器だけでもいろいろあるんだよ。」と言って、見たこともないギアをたくさん並べて見せてくれたこともある。
もちろん山の装備や歴史にも詳しくて著作も残している。『山への挑戦 -登山用具は語る -は、登山用具店「シャモニ」を経営していた堀田さんらしい、山道具の歴史について詳しく書かれた本だ。この本を手に取って「岩波っていうのはね、他の出版社とは格が違うんだヨ。」って、とっても嬉しそうに話していたのを思い出す。
Photo 「こんな本もあるんだヨ。まだウチに何冊かあるから君にあげるよ。」と言ってサインも書いてもらったのが、『特別企画展/山の道具 -装備の変遷をたどる -』(1993/富山県立山博物館)という本。こちらは地元 魚津岳友会の佐伯郁夫・邦夫らとの共著だが、数々の古今東西の装備はもちろん、山の本や雑誌の歴史や写真・図版も満載で見ているだけでも楽しい本だ。
昔の山案内人からつづく、「山岳ガイドの歴史と装備」について詳しく紹介した本をぜひ書いて欲しい、と言ってみたことがある。昨今の胡散臭い山岳ガイドが多い中、数少ないガイド魂を持った堀田さんにこそ書いてほしかった。でも、それも叶わぬ夢になってしまいました。RCCⅡから日本初のアルパインガイド協会の設立と発展に力を尽くし、登攀に生き、歴史を作り、アルピニズムの時代を語れる侍がまた一人去ってしまいました。残念です。
「さようなら、堀田弘司さん…。やすらかに。」

2006/07/14

「岩登りのうまくなる本」 松本龍雄

Photo_9 岩登りがうまくなる本昭和40/朋文堂

 名著『初登攀行』(1966/あかね書房)以前に書かれた、名クライマー松本龍雄による一風変わった技術本である。日本ではじめて埋め込みボルトを使用した張本人であり、人工登攀華やかなりし頃に出版されているにもかかわらず、内容は今日のフリークライミングに通じるものがある。副題に、-スポーツアルピニズム入門-とあるように、クライミングをスポーツとしてとらえて、「掃壁をやろう」「モラルマンからルールマンになろう」「早登り競争をしよう」と提案したり、「スポーツには、スピードと肉体の限界を越える快感がなくてはいけません。壁に工作をし、労働することは、仕事であってもスポーツではあり得ないのです。」と、自ら人工登攀の限界を説いている。「パイオニアワークとしてのアルピニズムは終わったが、スポーツとしてのアルピニズムの時代が始まろうとしている」と、現代のフリークライミングの隆盛を予見しているようだ。さすがです。

PS;カバーと本文のイラストは、人気の辻まこと。ちなみに、このケルン新書シリーズは、朋文堂が倒産する前後(?)には朋文堂新社という名でゾッキ本・バッタ本として再版されている。その際のカバーは、味気ない表紙に何故か変更された(写真右)。辻まことによる楽しい表紙デザインがないのも台無しだが、著者近影や著者略歴の記載も無くなっていて、いいかげんな作りになってしまっている。

2006/07/13

「ロック・クライミング」 奥山 章

0001_2 昭和32/角川書店

角川写真文庫の1冊で、R.C.CⅡの奥山章による技術本。岩登りと雪上技術を、写真とともに簡素な解説を添えて解説している。写真のモデルとしても登場し、所属する日本山嶺倶楽部や鵬翔山岳会、中野満らが協力している。ハーネスもスリングも前爪アイゼンもない時代のテクニックがわかりやすくて興味深い。

本書が出たのが昭和32年の7月。その年の3月には、吉尾弘が一ノ倉沢滝沢本谷を初登し、6月に奥山の店「梓」が開店。翌年1月にはR.C.CⅡ(第二次ロック・クライミング・クラブ)が発足されることになる。新しい時代がまさに動き出す、そんな時期の小品。

2006/07/07

「岩登りの魅力」 吉尾 弘

22 昭和53/ユニ出版

副題は、「初歩から人工登攀まで、その実践的理論と応用」とある。雑誌『山と仲間』に連載されていたものに加筆した、吉尾弘流ヒューマニズムを基調とした岩登りの技術書。山岳会と新人訓練への疑問や、労山へ加入し、岩登りのテキストを作ることを決意するまでの思いとともに、岩登りに対する氏の考え方、技術のすべてが書かれている。

著名なクライマーの手による技術書は多い。『岩登り術』藤木九三(大正14/RCC事務所)、奥山章『ロック・クライミング』(昭和32/角川書店)、松本龍雄『岩登りのうまくなる本』(昭和40/朋文堂)、小西政継『ロック・クライミングの本』(1978/白水社)、遠藤甲太『自分だけの山歩き山登り』(昭和56/経済界)などなど…。こういう本は、テクニックだけでなく、その著者のクライミングに対する個性的な考え方・思想などが読み取れて意外とおもしろい。