7 山書マニア 『画文集』

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2014/08/04

「山とある日」 上田哲農

山とある日 001


昭和42/三笠書房

 すごい“お宝本”を手に入れてしまった!  20年間も山岳書を蒐集していると、こういうラッキーチャンスに巡り合うこともあるもんだ。

 『山とある日』は、『日翳の山  ひなたの山』 (昭33/朋文堂)に続く上田哲農2冊目の画文集で、100部限定の特装本がある。手に入れた1冊は、故・安川茂雄氏(RCCⅡ・三笠書房)旧蔵の本で、著者により本文のカットすべてに手彩色された究極の逸品なのです。

 この本の存在は、『上田哲農の山』(1974/山と渓谷社)の編者・安川氏によるあとがきを読んで知ってはいたが、まさか“それ”が自分のものになろうとは、いや、目にすることさえできるとも思ってもみなかった。『上田哲農の山』は現在絶版になってしまっているので、少し長いが本書に関するエピソードについて語った、そのあとがきの一部を抜粋してみる。

 ~『山とある日』には百部の限定本が刊行頒布されているが、その一冊を上田さんから拝領している。百部の第参番で、署名の外に、「限りなき感謝をこめて、安川茂雄様」とあり、さらに「山の涯てに『山』ありて/きょうもまた…」という四行の短文が記されている。実に懇切な署名文だと思うのだが、それ以上にこの著者の誠実なというよりも表現しがたい異常な(?)…という外のない私への厚志は生涯でいくどと味わうことのない体験であったろう。特製本も本文ページの紙質がいくらか上質であり、表紙が茶色の裏皮であること以外にさして普及版とちがいがないのだが、私の一冊には一巻全ページの挿絵に画伯が水彩で(むろん手書きで…)色を入れてくださったのである。殊更にお願いしたわけではないのだが、十日間もかけたということで、私にこの一冊をくださった折に、「この一冊に十日間かかったんだぞ」といくらか怒ったように言われた。一体どういうことなのか私は一瞬分からず怪訝な思いでいたのだが拝領した『山とある日』のページをみて瞠目せざるをえなかった。まさに十日間の画伯の私への底知れぬおもいを胸底深く感じたのである。この一冊は山にまつわる私の山のお宝の屈指といえるだろう。だが、いけないことは山好きの来客がみえると、ついこの画伯の一冊をみせたくなるのである。
 その私の心情は単なる一人の山好きの自己満足だけではないと思う。又、同時に虚栄のためでもなく、上田さんが十日間をかけて丹精こめて一ページ、一ページ水彩を私のためにつけていただいた一冊の山の本は、すでに山の本の次元を離れて、私の山における一人の“師表”の辿った一筋の嶮しくも甘美な道なのだと思うのである。

 外装のダンボール箱には、安川氏により赤ペンで『本文総頁著者彩色三冊之内三番』書かれている。本書を何度も何度も手に取り、嬉しそうにページを捲りながら無邪気に喜んでいる安川茂雄氏の顔が目に浮かんでくるようです。

 登山文化の貴重な資料(というか、ひとつの芸術作品といってもいいかも)を、次代へ繋げるためにも大切に保存しなければ…、と心して思う。

安川茂雄 001

挑戦 001 挿絵 001


PS:
山の画文集と呼ばれる本のうち、特に読んでもらいたい名著を挙げておきます。

 『霧の山稜』 加藤泰三(昭16/朋文堂)
 『日翳の山  ひなたの山』 上田哲農(昭33/朋文堂)
 『山靴の音』 芳野満彦(昭34/朋文堂)500部限定本の他にも50部の特装限定本あり
 『山からの絵本』 辻まこと(昭41/創文社)※特装限定本100部あり
 『山で一泊』 辻まこと(昭50/創文社)※特装限定本100部あり

2013/08/28

「山靴の音」 芳野満彦

山靴の音  芳野満彦氏サイン1

昭和34/朋文堂

  マロリーやシプトン、そしてヒラリーのごとく「山がそこにあるから」といって、僕は登りたくない……。モルゲンターレルのように、また彼の語る水晶採りのお爺さんのように「そこに何かがあり」それを僕は求めていきたいと思う。

 冬の岩壁初登攀の黄金期、「スーパーアルピニズム」が高らかに謳われた時代。吉尾弘『垂直に挑む男』(昭38/山と渓谷社)古川純一『わが岩壁』(昭40/山と渓谷社)松本龍雄『初登攀行』(昭41/あかね書房)とともに、当時の若いクライマーに強い影響を与えた1冊。いずれも長年読み継がれている個性的な名著だが、なかでも本書はユニーク。初登攀記・遭難記のほかに、散文詩やエッセイ・画文・版画なども多く収録。ここには“芳野満彦”という多才で魅力的な山男の青春が詰まっている。

 上田哲農や辻まこと等、プロの画家のものと比べるとけっして上手いとは言えない絵(失礼!coldsweats01)と、けっしてスマートとは言えない語り口…。だけど、一見粗野のようでいてナイーブな感性と、不思議と味のある絵が妙に印象的だ。いかにも不器用な山男が、誰もいない冬の山小屋でトツトツと綴った山日記といった感じで、山の匂いがプンプンする本だ。  

  『山靴の音』はこれまでに出版社を替え(出版社倒産のため)るたびに、改装・改版・加筆されていて何種類かのバージョンが存在する。

  初版(昭34/朋文堂)
  ケルン新書(昭38/朋文堂)
  山岳名著選集3(昭40/朋文堂)
  the mountainsシリーズ 4(昭41/二見書房)
  山岳名著シリーズ4(昭47/二見書房)
  500部限定本(昭50/四季書館)
  50部特装限定本(昭50/四季書館)
  『新編 山靴の音』(1981/中公文庫.2002/中公文庫BIBLIO

…他にもまだあるかもしれないが、山の本でこれだけたくさんのバージョンがあるのも珍しく、それだけ愛読者が多いことがうかがえる。

 僕の本棚には今、3冊の『山靴の音』がある。朋文堂オリジナル初版と、つい最近購入(なんと定価で!smile)した四季書館の50部特装限定本と、中公文庫BIBLIO版。この3冊はまったく別モノと言ってもいいほど異なった内容になっている。「山の本はオリジナル初版こそがベスト。まして文庫本などは論外!」だと、ずっと勝手に思い込んでいたが、『新編・風雪のビヴァーク』や『屏風岩登攀記』のようにバージョンアップされていたりする本もあるので、後版も要チェックのようです。

 昭和34年出版の朋文堂初版は安川茂雄がプロデュース。装丁は著者。本文の使用原紙の配慮(第一部と第二部とでは紙を変えている)など細部にまでセンスの良さを感じます。表紙も含めて、もっとも雰囲気のあるの版。

 四季書館の50部特装限定本(23番/50部の内)は、「ゴンベーと雪崩」「長塀山」など新たに10編を加えた二見書房版山岳名著シリーズを底本とした500部の特装限定本のうちの、さらに50部の特製限定版。こちらも安川茂雄プロデュースによる。著者がすべての絵に肉筆水彩で着色し(ルート図にまで!)、多くのイラストを加え、一葉の水彩画を貼り、皮のカバーを掛け、二重箱に入れられたサービス精神満載の凝りに凝った豪華本。これはスゴい。画家として著者の強いこだわりを感じる。芳野ファンはもちろん、山の本好きにはたまらない1冊。

 中公文庫版『新編 山靴の音』は、詩や画文を大幅に削り、「ヨーロッパアルプスへ」という章を追加。こちらは文庫本ならではの読み物を中心とした編集になっている。せっかくの自筆のルート図が味気の無い図版に差し替えられてしまったのは残念だが、これも文庫版ならではのこだわりだろう。

PS1;以降、2作目の『アルプスに賭ける 穂高からアイガーへ』(昭39/実業之日本社)や『新・山靴の音』(1992/東京新聞出版局)などは、アクの強い独特の“芳野ブシ”が増して、読み手として個人的にはとても苦手なのですが、『山靴の音』だけは別。10代から20代の頃に綴られたためか、処女出版のせいか丁寧に書かれていて、文章は瑞々しく、読後感はすがすがしい 。

山靴の音限定50 

PS2; 雑誌『山と高原№336』(1964.12/朋文堂)には、人物特集として芳野満彦が紹介されている。(ようやく入手できましたよ。)
6ページのグラビアを含めた26ページにわたる大特集。山川淳による評伝、吉尾弘や新田次郎らによる人物評、「芳野満彦を語る」。「アイガーに賭ける」と題した座談会、30の質問などで構成されていて、芳野満彦の魅力を存分に知ることができる好企画です。
ちなみに、340号の寺田甲子男344号の吉尾弘とともに、非常に内容が濃く、貴重な1冊。

山と高原

PS350部限定本の謎」
 その後、神田の悠久堂で件の50部特装本をもう1冊発見(48番/50部の内)した。そして、何気なく本を開いて驚いてしまった。巻頭の水彩画(これが素晴らしい!)もまったく違うものである上に、本文にはないイラストが数点、水彩・サインペンで書き加えられていたのです。
限定本とはいえ、これほど1冊づつが異なり、手の込んだ本は他には見たことがない。『山靴の音』は、著者にとってよほど思い入れの強いものだったことがわかります。
おそらく、他にも様々なバリエーションの『山靴の音』が存在するのかと思うと、氏のサービス精神や遊び心がうかがえてなんだかとても楽しくなってくるじゃないですか。

山靴2-1 山靴2-2 山靴2-3

PS4ついでに見つけたサイン本です。ここにも、サービス精神と遊び心がたっぷりな氏の魅力的な人柄が表れています。

芳野満彦氏サイン2

『われ北壁に成功せり』(1966/実業之日本社)の見返しに書かれた署名。
筆ペンで書かれていることも珍しいが、クライマーのとぼけた顔のイラストが面白い。

芳野満彦氏サイン3

『山靴の音』(昭34/朋文堂)の見返しに書かれた署名で、雑誌『岩と雪』編集長の岩間正夫氏に宛てたもの。

 この他にも、先日覗いた阿佐ヶ谷の穂高書房では、アルムクラブ時代(おそらく20歳前後の頃)の芳野満彦による直筆の書き込みがある本(『星と嵐』ガストン・レビファ)を勧められた。後年に日本人としては初めてマッターホルン北壁登攀に成功することになる氏が、若かりし日に夢見るように何度も読んだものだろう。本のダメージがかなり残念な状態だったのでその時は買わなかったけど、あれはお宝だったのでしょうか。
穂高書房穂高書房、店主の和久井さん
「どもども、はい~ハィ。わざわざ来てもらってもネ、目新しいのは何も無いよ。もう欲しい本はみんな持ってるでしょ?」と言いつつも、店の奥にはとんでもないお宝を隠し持っているかも…。

2011/11/22

「日翳の山 ひなたの山」 上田哲農


日かげ_0002上田哲農サイン2


昭和33/朋文堂

「行為」は「ひなたの山」、「思索」は「日翳の山」と考えて、これは車の両輪の如く、離そうとして離れないし----登山がスポーツの王とされるゆえんもここにあり、書名にしたわけです。
どうやら一生を通じて「山」を離れてものを考えられないぼくの生涯にあって、山にある日は「ひなたの山」、街にある日は「日翳の山」、そうしてこの写実と抽象の二つをらせん形によじ登ることによって、さらにその頂に、毅然と光っている形而上の真の「山」に到達するルートを発見したいとこいねがっているともいえます。

 戦前は日本登高会のリーダー、戦後はRCCⅡの代表として活躍した名クライマーで、画家でもある上田哲農(本名・徹雄)の古典的名著。登攀記あり、紀行文あり、詩や散文・エッセイあり…、円熟した筆致の絵と文とが絶妙で素晴らしい。上質な短編小説集を読んでいるようで、飽きさせることなく読む者を惹きつける。また、本業である水彩画についての話や、家族の話なども山と絡めながら織り込まれていたり、死をモチーフにした話も少なくないせいか、重厚な“大人の山の画文集”に仕上がっている。
 中でもやはり、代表作「ある登攀」は珠玉の一編ですshine読むべし!他にも、母の愛情を綴った「守護符」、亡き娘との他愛のない思い出のひとこま「鉄の蜘蛛」、ミステリアスな「習慣」幻想的な「蝶とBivak」なども絶品だ。

 同じく名クライマーでもあり、画文集『山靴の音』の著者、芳野満彦は、「『日翳の山 ひなたの山』を手にしたときから、もう自分の山登りも絵も続けて行く自信を失うほどの大ショックを受けた。とにかく、一人の人間の生きざまを狂わした書物はない。」と、強い影響を受けたことを本書文庫版のあとがきで告白しています。

 ちなみに、著者の没後に出版された中公文庫版(昭54/中央公論社)は、カラーページの美しい水彩画「深秋の不帰岳」・「ある登攀」・「越後湯沢にて」・「鵺」・「信濃大町展望」・「長次郎谷残照」・「北の街」が、残念なことに全てカットされてしまっている。これは痛いcrying。画集でもあるのに肝心の絵をカットするなんて…。また、「雨の丹沢奥山」・「岩小舎で」・「蝶とBivak」などのモノクロの絵もない。さらに、「北岳にて」や「ある登攀」などの迫力ある大きな絵も、ページの都合で小さくレイアウトされてしまっている…。こういった画文集は、やはり文庫本ではダメだ。
 山の本好きは、ぜひとも初版オリジナルで読んでほしい。本書の初版は、製版・印刷・造本には特にこだわった「朋文堂山岳文庫シリーズ」の第十一巻として刊行された。堅牢な貼箱入り。装丁も筆者。しかし、定価1200円は高すぎた(現在のお金に換算すると22000円位?)のか、当時はどうやらあまり売れなかったようです。

※画像右上は、表紙見返しに描かれた絵入りの識語とサイン岩と雪との涯にあった ぼくの青春の日を 哲農 1958年10月とある。こういったお宝署名本との出会いもあるから古書蒐集は楽しい。

 著作は他に『山とある日』(昭42/三笠書房)※100部限定本あり『たのしい造形 水彩画』(昭43/美術出版社)『水彩画教室』(昭44/鶴書房)。氏の没後に新たに編集されたものとして、『きのうの山 きょうの山』(昭55/中央公論社)と『上田哲農の山』(1974/山と渓谷社)がある。 

山とある日水彩画教室

PS1;朋文堂初版には3つのバージョンがあるので、古書購入の際には注意が必要だdanger。ハードカバーの本体は同じでいずれも初版には違いないが、①堅牢な貼箱に入ったオリジナルの他に、②簡素な印刷がなされたペラペラのキカイ箱入りのものと、③単にカバーを掛けただけのものとが存在する。これは書店で売れ残り、版元に返品された汚れた本を再販する際に新装を繰り返したためで、もちろん①の堅牢な貼箱に入ったものがベストです。
 
PS2;お宝自慢ついでに2点紹介。画像左は、第二次RCC編『挑戦者-‘65アルプス登攀の記録』(昭40/あかね書房)に描かれたサイン。画像右は『日本の岩場-グレードとルート図集』(昭40/山と渓谷社)の表紙見返しに使用された原画『太陽を掴む者』ラフに描かれたようなイラストでも、非常に繊細に描かれていることがわかる、貴重な資料です。

アイゼン太陽を掴む男

2011/06/22

「アルプスに賭ける  穂高からアイガーへ」 芳野満彦

アルプスに賭ける 昭和39/実業之日本社

名著『山靴の音』(昭34/朋文堂)につづく芳野満彦(本名=服部満彦)の2作目。文学的な香りさえする前作と比べると、かなりラフに書かれたという印象のエッセイ集…、というよりも雑文集。この手のアクの強い“芳野節”は個人的には苦手なのですが、『山靴の音』に出てくる小屋番時代や初登攀の裏話が読めるのと、1963年に真っ先に渡欧して日本人クライマーとして先鞭をつけたアイガー北壁試登のようすが綴られている(『ぼくのアルプス記』)という点では興味深い。
あとがきで、「この本は、ふたたびアイガー北壁を登るための資金の一部として出版されたものです。 ~ この本のネライは、一人でも多くの人が山好きになり、また山登りとはタノシク、意外にユカイで人間的なものだということを知っていただくため ~ (中略) ~ この本に出てくる文章は1回15枚として、全部1晩で綴った一夜づけのものばかりです。ですからおよそ文学的とか芸術的な、いわゆる文章の上での作品なんてものは一篇もありません。」と、かなり“やっつけ仕事”な編集だったことを告白しているが、意図的に前作とは違う芸風の本を作ろうとしたようでもあります。山一色の生活だった青春期に記した、瑞々しい前作から5年。「結婚・就職・子育て」という、いわゆる“人生の三大北壁”を迎えた生活環境の変化と、変わらぬ山への情熱との間で もがく姿が垣間見えます。 

なお、本書が出版された1964年には大倉大八とともに2度目のアイガー北壁試登を行い、翌1965年には渡部恒明をパートナーに、日本人としては初めてマッターホルン北壁の登攀に成功した。この年は、前年に海外渡航が自由化されたこともあって、RCCⅡ同人ら大勢の日本人クライマーが欧州アルプスに渡り、ヨーロッパ三大北壁などで成果をあげた。これらの報告については、挑戦者 ‘65アルプス登攀の記録』 第Ⅱ次RCC編(1965/あかね書房)『われ北壁に成功せり』 服部満彦(昭41/実業之日本社)に詳しい。

PS;「どもども。気が付いた?この本の値段は、この絵葉書代だよ。」と言って穂高書房のオヤジさんは、ヒゲをなでながらニヤッと笑った。本に挟み込んであった絵葉書(写真下)はエアメールで、差出人はなんと大倉大八氏。2度目のアイガー北壁試登の際に、第二雪田付近で落石に遭い、登攀を断念した旨が書かれています。
こういう思いもよらないオマケ(お宝かも?)との出会いがあるのも、山岳古書の蒐集の面白さです。

アイガー

2010/10/22

「辻まこと 山とスキーの広告画文集」 秀山荘

辻まこと0003秀山荘赤秀山荘茶


2010/山と渓谷社

「道具は揃ったかい?ヒマラヤもいいけど ウラヤマもいいぜ!遭難するなら、ぜひ当店内でドーゾ.」
「最も高いとこへ登った山ヤがえらい登山家なら、遭難後昇天した山ヤは最高の登山家である.」

 辻まこと(本名・辻 一、1913~1975)は、フリーのイラストレーター・画家・詩人・エッセイスト・作家…で、山スキーと山歩きをこよなく愛した自由人である。その生き方や作品は多くの人の共感を呼び、現在でもその人気はまったく衰えていない。
 本書は、山とスキーの専門店「秀山荘」創業30周年を記念して、少部数出版された私家本の復刻本ですが、こういったマニアックな私家本までもが、今復刻されることに驚くとともに、相変わらずの人気の高さをうかがわせる。本書に目をつけて、文庫本としてではなくてほぼ完全な形で復刻した山渓もエラい!
 『山からの絵本』(昭41/創文社)『山で一泊』(昭50/創文社)などの著作とはまた違って、自由度が高いせいか、肩の力が抜けたユルイ作風。トボケたような軽妙なタッチの絵と痛烈な風刺やユーモラスな文章が、イイ感じで楽しい。
創業以来、親交のあった(居候していたwobbly)氏が20年にわたり雑誌「山と渓谷」「岳人」「山と高原」などに描き続けた秀山荘の広告を、スクラップブックにランダムに収集したような編集になっていて、どのページを開いてもひとコマ漫画のような小さな広告のなかにも、独特の『辻まことの世界』が広がっています。
 
写真中は昭和56年に白日社から出版された元本です。山渓版のような紙の表紙カバーではなくて、厚手のビニールカバーが 付いている。写真右は、おそらく特装本。厚手の茶色い布地に、「秀山荘」のロゴと背の書名が金箔押しされている。ただし奥付には特に記載がないので、何部製本されたのかは不明。

PS1;右下の画像は、当時の本書出版の広告チラシ。秀山荘版「辻まこと広告マンガ集」となっている。
なお今回の山渓版では、慶応大学スキークラブ「デイモンズ」の会報「DEMONS」から6点の広告が追加され、辻まこと年譜も付されている。

辻宣伝

 PS2;ちなみに現在の池袋「秀山荘」は、当時の「秀山荘」とはまったく別物である。たしか10年ほど前に倒産してしまい、近くのS.R.C(スポーツ流通センター)の経営になったはず。その後、S.R.Cも倒産したという噂も聞くが、長いこと行っていないので現在どうなっているのかはよくわかりませんが。