先鋭クライマーの旗手だった若き日の吉尾弘の処女作。青春の初登攀行の記録である。そのほとんどが初登攀、そしてすべて積雪期というハードな内容。登攀記としては当時、大先輩の古川純一・松本龍雄・奥山章らに先駆けて出版された。このことからも、20年の空白を破った積雪期一ノ倉沢滝沢本谷をはじめ、究極のスーパーアルピニズムの実践といわれた穂高での継続登攀等などが、いかに重要な記録であったかがうかがえる。初版時、氏の年齢は25才。若さゆえの気恥ずかしいほど率直な心情と、リアルな登攀描写が読んでいてドキドキさせる。
今から12年前。氏と初めてお会いしたときに、この本を差し出してサインをもらったことを思い出す。そこにはサインペンで、“登山愛好者は行動の詩人 26.2.1994 吉尾君君より”と書かれている。(君君…、吉尾弘君と書こうとしたのかな。酔っぱらっていない時に頼めばよかった)今だったら“登山愛好者は行動の詩人”ではなくて、“クライマーは行動の詩人”と書いてくれただろうか…。
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