昭和40/朋文堂
ケルン新書シリーズの1冊。これは山岳書としてはかなり異色な本だ。東京緑山岳会の(82才!にして今だ現役会長を務める)大親分である寺田氏の自伝と、生々しい山岳遭難現場の実録。寺田節の、歯に衣着せぬ奔放な語り口で、バッサバッサと切りまくる。なぜ遭難の引き降ろしをやるのか?との問いには、「面白いからだ。引き降ろしほど面白いものはないよ。」と語り、会旗にドクロのマークを掲げたり、本文の写真も、『山岳サルベージ繁盛記』というタイトルにしても、挑発的でそうとうにトンガッている。
その言動などからも眉をしかめる人も多いだろう。しかしその根底には、仲間やクライマーに対する氏らしい深い愛情が流れているのです。「山で死んでは絶対にいけない…。」と。
PS;前述と同じケルン新書シリーズの松本龍雄・著『岩登りのうまくなる本』と同様に、この本も朋文堂が倒産する前後に朋文堂新社という名でゾッキ本・バッタ本として再販されているが、表紙はなんとも味気ないものに差し替えられてしまっている(写真右)。さらに、著者近影や著者略歴の記載も無くなっていて、残念なほどいいかげんな作りになってしまっている。
また、雑誌『山と高原』の最終号である№340(1965年4月号)には、「山の危険と遭難」という特集とともに、人物特集として「寺田甲子男のすべて」と題して大々的に取り上げられている。内容は、多くの写真グラフと遭難救助のルポ。氏への30の質問、夫人や東京緑山岳会の会員が語る人物評などのほか、「谷川岳遭難遺体収容史」を東京雲稜会の吉野幸作、登歩渓流会の杉本光作とともに語り合っている。こういった大特集は今の雑誌にはまずありえないでしょうが、山岳遭難が多い今こそ思い切って企画して欲しいものです。
管理人メモにも遠い関連ごとを書きましたです。
投稿情報: 管理人-鶴多郎 | 2006/07/26 00:32