昭和40/朋文堂
名著『初登攀行』(1966/あかね書房)以前に書かれた、名クライマー松本龍雄による一風変わった技術本である。日本ではじめて埋め込みボルトを使用した張本人であり、人工登攀華やかなりし頃に出版されているにもかかわらず、内容は今日のフリークライミングに通じるものがある。副題に、-スポーツアルピニズム入門-とあるように、クライミングをスポーツとしてとらえて、「掃壁をやろう」「モラルマンからルールマンになろう」「早登り競争をしよう」と提案したり、「スポーツには、スピードと肉体の限界を越える快感がなくてはいけません。壁に工作をし、労働することは、仕事であってもスポーツではあり得ないのです。」と、自ら人工登攀の限界を説いている。「パイオニアワークとしてのアルピニズムは終わったが、スポーツとしてのアルピニズムの時代が始まろうとしている」と、現代のフリークライミングの隆盛を予見しているようだ。さすがです。
PS;カバーと本文のイラストは、人気の辻まこと。ちなみに、このケルン新書シリーズは、朋文堂が倒産する前後(?)には朋文堂新社という名でゾッキ本・バッタ本として再版されている。その際のカバーは、味気ない表紙に何故か変更された(写真右)。辻まことによる楽しい表紙デザインがないのも台無しだが、著者近影や著者略歴の記載も無くなっていて、いいかげんな作りになってしまっている。
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