1979/山と渓谷社
前述『穂高岳の岩場』の姉妹編としてほぼ同時期に出版。グループ・ド・ボエームの細田充が、同じ会の若手の協力を得て、全(30)ルートを実際に登攀して取材している。この手のものは他に類著がないので、アルパインクライマーにとっては貴重な資料である。
本書が編まれた頃の雑誌『岩と雪』№69を見ると、「日本のロッククライミングの行方を考える」という特集で、「日本の岩場は、いまどうなっているか -穂高岳と剣岳を例に-」という記事が載っている。本書の細田充と『穂高岳の岩場』の武藤昭による岩場の現状レポートで、往年の名ルートが、過剰に乱打されたボルトやハーケンによって人為的に容易になってしまっていることが報告されており、日本の岩登りの行き詰まり状態を憂いた内容になっている。安易な人工手段の乱用をつつしみ、できるかぎりフリーで登ることの楽しさを発見しなければならないだろう、と結んでいるが、それから約1年後に発行された『岩と雪』№72の表紙の、ジョンパーカーのボルダリングショットと、戸田直樹によるヨセミテのレポートは、当時のクライマーに非常に強烈なインパクトを与えて、現代のフリークライミング・ムーブメントのきっかけとなった。
PS;この『剣岳の岩場』にも2種類の異なるカバーが存在します。写真左は初版のもので、右は第2刷。ちなみに、このあと出版された同じシリーズの『谷川岳の岩場』と『北岳・甲斐駒と黒部の岩場』は、異なるカバーのものは確認していません。
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