昭和40/山と渓谷社
昭和30年代の前半、岩壁初登攀の黄金期に活躍した名クライマー・古川純一の処女作。既に当ブログで紹介した、吉尾弘・松本龍雄・芳野満彦らRCCⅡの個性的な登攀記とともに、当時の若いクライマーに強い影響を与えた一冊。
本書も「中公文庫」で読むことができるが、できれば初出の「山と渓谷社版」で読んで欲しい。9編の重要な初登攀記と、『わがアルピニズム』と題した古川流アルピニズム論で構成されている。(中公文庫版では、この章46ページ分が全てカットされている。)
僕の持っている本は、珍本というか、お宝というのか…。
RCCⅡの二宮洋太郎(学習院大山岳部OB)に宛てた署名本なのですが、『「わが岩壁」ではなくて原題は、「わがアルピニズム」でした。巻末のアルピニズム思考から読んで下さい。そのように書きましたから。F 』という古川氏のメッセージがはさんである。またこれに対して、本文には二宮氏による反論・直しが万年筆で書き込まれているのです。当時は、初期の雑誌「岩と雪」にも見られるように、盛んに“アルピニズム”が論議されていた時代だったようで、この本でも、二人のトップクライマーがアルピニズム論を熱く闘わしている様子が伝わり、生々しくてとても興味深い。今どきの軽々しい「自称アルピニスト」と呼ばれる人たちとは、クライミングに対する純度が圧倒的に違う。
著作は、他に『いのちの山』(昭42/二見書房)がある。
人から人へと渡ってきた古書には物語がある。署名本の場合はなおさらで、その本を通じた著者と元オーナーとの間にある物語を想像するのは楽しいものです。
コメント
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