「山友社たかはしのビブラム」ん?変な題名だな?と思われるでしょう。僕が学生時代に4年間所属していた中央大学ワンダーフォーゲル部(以下、中大WV)では、ビブラムソールの革製の重登山靴のことを“ビブラム”と呼んでいました。飯田橋の『二葉』が廃業後は、中大WVでは代々この“ビブラム”を四谷の『山友社たかはし』でそろえていたはずです。卒業後しばらくして、また山を再開したくなった時に(20年ほど前)、これを機会に一生ものの“ビブラム”を作ろうと思い立ち、オーダーメイドでこしらえました。夏山も山スキーも、どこへ行くにもこれ1足でOKでした。かなり重いけどとても頑丈な作り。袋ベロなので、しっかりと足を包み込むような安心感。美しいフォルム。う~ん、完璧。名品とはこういうもののことを言うのでしょう。まめに専用の保皮油を塗って馬の毛のブラシでゴシゴシと磨いては、眺めながらひとり悦に入り、大切に履いていたのですが…。
嗚呼、それなのに…、あんなにもいとおしかったのに…。時代は変わり、気は変わり。その後登場した、メンテナンス不要のプラブーツの時代を経て、現在のカラフルな皮のソフトブーツとトレッキングシューズの時代へ。
いつの間にか出番がなくなり、手入れもしないまま押し入れの中でカビが生えて、ついには捨てられてしまひました。あんなにも思い入れがあったのに、時代の流れとはいえ、思えば可愛そうなことをしてしまったものです。今はかなり後悔しております。また作ろうと思っても、どんなに欲しくても、もう『山友社たかはし』は無いのだから…。
時代は変わる。山の装備も、多くの山道具の店も次々と代わり消えてしまった。近くにあった『チョゴリザ』もなかなかイイ店でした。『山友社たかはし』も、時代の流れには逆らえずに廃業してしまった。もうあの“ビブラム”は戻らない。あれほど愛着が沸く靴と出会うこともないでしょう。
昔は、山の装備は何かと手入れしなければいけないものが多かったような気がする。“ビブラム”や、キスリング、コンロ、輪カン、シール、雨具。アマニ油でベタベタのシールをオーバーヤッケに巻いて山スキーを滑ったもんです(わかるかな~?)。家型テントに…、そう、今にも倒壊しそうな古い山小屋まで自分たちで防腐剤とかを塗っていたんだよなぁ。話は飛んでしまうが、乾燥野菜やペミカンも自分たちで作っていた。山行前後はいろいろと手間がかかって面倒だったのに、そういった時間も含めて「山の楽しさ」だったし、山道具への愛着も育まれたんだろうと思います。
話はそれましたが、今は無き我が『鹿沢山荘』です。懐かしい…。
防腐剤とアマニ油と焚き火と酒と「山の匂い」がします。
ちなみに、現在履いているのは、メレル(MERRELL)と、冬靴のボリエール(BOREAL)です。メレルはデザインがいいのでチョイス。最近は岩場でも履いてる人をよく見ます。カルパッチョさんも同じ靴を履いていたので話をしたら、「この靴、よく滑るよね~」だって。確かに。わしは一度城ヶ崎で溺れそうになりましたよ。
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