山の道具の中には、そのままではいまいち使いにくいものもあるし、「こんなギアがあったらいいのに…」と思うこともある。昔と違って、山道具屋の棚には目移りしてしまうほどたくさんのギアで溢れているのに、である。
例えば、写真の、仮称“ユージチョンチョン”は、針金のハンガーを使った自作のギアで、アイスクライミングの際にアイススクリューに詰まった氷を落としたり、氷壁の確保支点としてアバラコフ(V字スレッド)を作るときに使うものです。安価なだけではなく、市販のものと比べて軽く、またある程度柔らかいので墜落したりした時などに誤って体に刺さったりする危険がないというスグレモノです。考案者は、ユージはユージでも、元祖ユージの柏瀬祐之さん。もうすぐ古希に手が届きそうな年齢ですが、「まだまだ山を遊びつくせ!」と、忙しく飛び回る名クライマーです。他にもカラクリヌンチャクなどなどアイディアの引き出しは多く、そのつど感心させられます。
それにしても、道具が無かった時代の昔の人(失礼)は偉かったなぁ、とつくづく思う。脱毛です。いや、脱帽です(笑)。“クライミング界のエジソン”こと宮崎ホイホイ秀夫さんや、吉尾弘さんにもユニークなアイデアギアを見せてもらったことがあるし、黒戸尾根七丈小屋主の田部直敏さんの、改造して原型を留めていないアイスバイルの数々にも驚いたことがある。「モノが無いんなら自分で作ってしまえ。」という、忘れていた発想。登るためには、クライマーは体だけでなく頭も柔らかくなければならないんですねぇ。
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