皆さんご存知、ペツルのシャントです。(たまさかが盛んに薦めるので)、まつど岳人倶楽部内では普及率なんと!100%ですが、、なぜか他のクライマーで持っている人をほとんど見たことがありません。ま、スリング(シュリンゲ)1本あればマッシャー結び(昔はプルージック)で事足りるだろっ、と言われれば、そりゃそうなんですが…。
クライミング中の事故としては懸垂下降の失敗によるものがかなり多いという。しかも、失敗=重大な事故・あるいは死亡につながることからも、懸垂下降は慎重かつ確実に行わなければならない。懸垂下降は誰でも簡単にできる技術なだけに落とし穴が多く、奥が深いのです。下降器や支点へのロープのセットミスなんていうのは論外(実はこれが一番多いのだが…)ですが、支点の崩壊・スッポ抜けによる転落・落石の誘発・ロープのスタック・ロープのスッポ抜け(人間残置?)など、様々な事例が考えられます。また、空中懸垂での「結び目の通過」「登り返し」「仮固定」…や、落石を誘発させないためにロープを落とさないで降りる方法、スピードアップのために2人同時に降りる方法や負傷者を背負って降ろす方法など…、様々な状況を想定したテクニックも同時に身に付けておく必要もあります。
わしは現在でも懸垂下降が苦手というか、怖いので嫌いです。できればやりたくないので、黒部丸山東壁とか穂高屏風岩、大同心雲稜に行った時も懸垂せずに、頂上経由でわざわざ遠回りして降りたほどです(それはそれで、充実した面白い登攀にはなったのですが)。特に初めて降りるラインで、しかも下が見えない状況での空中懸垂なぞは、嫌ぁ~な感じがするものです。こういう時は、毛の生えた心臓を持つ相方に先に下りる役を譲ったりします…、いや、そういう話しじゃなくて、先に下りる人はシャントを使ったほうが、安全・安心だと思います。なんせビビリぃなもんで、かなり慎重にチェックしてから降りるので、今まで事故無く来れたのかもしれません。
「シャント」は登行器の一種ですが、基本的には下降器のバックアップサポート(ストッパー)として使われます。「重荷を背負った空中懸垂の不安」を解消する方法を相談したところ、高田馬場『カモシカスポーツ』で薦められて15年ほど前に購入しました。構造がシンプルで扱いやすく、しかも他の登行器のような、ロープに咬むように付けられたギザギザが無いのでロープを痛めることがない、という点が特に優れています。
PS1;「シャント」って、いつ頃からあるんだろ?と気になって調べていたら、なんと『岩と雪 №28』(1972年)の表紙にド・ド~ンと紹介されていました。こんな昔から!しかも形がほとんど変っていないぞ!、と驚いてしまった。以下、“表紙のことば”よりそのまま再録します。40年も前にすでに完成品だったんですねぇ。
「今回のモチーフは、芳野満彦氏が、この夏、ヨーロッパから持ち帰った新しい登行器《SHUNT》です。簡潔なフォルムは量感にあふれていて、岩にたたきつけても、ハンマーでなぐりつけても、びくともしない堅牢そのものに見える。ある著名なデザイナーが「機能を徹底的に追求したものは美しい」といったが、実用本位に造られたであろう登行器が、私にはジェット機の一部分のような緊張と充実感をたたえた優れた造形物として目に映った。(加藤)」
PS2;ところで、以前『カモシカ』のギア売り場にいた大野さんと大瀧さんは、今頃どうされているのでしょうか?二人ともマニアックなほど、ギアの知識が豊富なのでよくお世話になったのになぁ…。彼らみたいな店員さんはとても貴重な存在でした。東京近辺の山道具屋では、あと目白『カラファテ』と荻窪『フレンド』くらいでしょ。価値あるお店は。
北岳バットレス、マッチ箱のコルへの懸垂下降
当時はシャントの存在は知らず、プルージックでバックアップしています。現在では、マッシャーが主流ですが…。
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