はじめに言っておきますが、セルフビレイはメインロープで行うのが鉄則です。しかし、ビレイポイントに着いたばかりのトップが確実なビレイステーションを作り上げるまでの間の“仮ビレイ”として、あるいは懸垂下降の準備の際の“仮ビレイ”としてデイジーチェーンは便利です。クライミングを始めたばかりの頃はデイジーチェーンなんてまだ売ってなかったので、スリング+安全環カラビナをハーネスにセット(“カウテール”と呼ばれる方法)していましたが、まもなくブラックダイヤモンドのデイジーチェーンが出てからは、長い間それを使っていました。現在、僕らはデイジーチェーンとして「ペツルのクイックフィックス」を使っています。こいつはとっても使い勝手がイイのですが、強度的にはかなり弱いので注意が必要です。
デイジーチェーンの類は、“エイドクライミング用の調節型スリング”として作られているので、“仮ビレイ”という使い方も、メーカー側はWeb上(輸入元のアルテリアとロストアローを参照)で「推奨しません。」「墜落からの保護性能はありません。」と、使用上の注意を呼びかけています。
まず、クイックフィックスの引っ張り強度は15odaNしかありません。メーカー側の落下テストでは、クイックフィックスの長さを80cmに伸ばした状態で、80㎏のダミーを落下(落下距離80cm)したところ、バックルの部分で破断したことが報告されています。つまり、使用する際は静加重しか耐えられないものと考えたほうがいいです。類似商品のメトリウスのイージーデイジーは1.3kN。ブラダイのデイジーチェーンは16kNほどありますが、各ポケットは3kN。ちなみに、ビレイ点のアンカーとしては22kNの強度が必要とされています。メトリウスPAS(パーソナルアンカーシステム)は各ポケットの強度が18kNあるので、ロストアローではセルフビレイとして使う場合にはこちらを薦めているようです。(参考:1kN=100kgf、 1daN=10N=1kgf)
まつど岳人倶楽部でも、これらのデイジーチェーン類を使っている人は多いので、使用する際には改めて注意をしてもらいたいと思って書いておきました。繰り返しになりますが、セルフビレイは必ずメインロープで行うのが基本です。デイジーチェーンをセルフビレイのバックアップとして使うことは間違いではありませんが、これに限らず、ギアは正しい使い方や性能はもちろん、「弱点」も十分に理解しておく必要がある、ということも覚えておきましょう。
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